軍師、責める

「過剰に反応していますが、今までの経緯を説明するにあたり大詠師と謡将の事を全く何も言わないということは出来ないし、出来ても相当に難しいとは貴女も分かるでしょう。その上で大詠師の話を主とした所で預言を達成させることを目標としているユリアシティの方々の事を考えれば、むしろ反感を買う可能性の方が高いのは目に見えています。となれば謡将の話を主にした方が市長を始めとした方々の反応も大きくこちらに寄ってくると見ていますし、何より身内という立場の者がそうしていたという事実に事情を知っていただいた方がよろしいでしょうからね」
「それは・・・確かにそうかもしれませんが・・・」
「肉親の悪行を同じ肉親に明かしたくないといった気持ちなのかもしれませんが、考えていないのですか?ユリアシティの方々にも何も言わずに行動を起こしていた謡将ですが、そもそも謡将は預言と預言に傾倒する世の流れを壊さんとしていたこと・・・その中にユリアシティとその住民も含まれているということを」
「っ!?」
その反応にモースとヴァンのどちらを利用すれば潤滑に進めるかを話す孔明だが、またグズグズと意を決する事が出来ない様子にユリアシティもヴァンの攻撃対象だっただろうと口にすると、心底から考えていなかったと言ったように驚愕の表情をティアは浮かべた。
「・・・謡将が預言もそうですが、預言を守るべきと考え実行してきた何よりの存在であるユリアシティの事を何も恨んでもいないし、ましてや自分の目的が達成されたならユリアシティの住民は厚遇するとでも考えていたのですか?そしてユリアシティの方々がそれらを知った後、謡将と預言の事を滅茶苦茶にしたと言うのに仲良くしようなどと考えると思いますか?想像してみてください・・・謡将が目的を達成した後にユリアシティの方々が対面した姿を」
「っ!・・・それ、は・・・・・・」
「想像出来ないでしょう?そこまで来てしまえば謡将とユリアシティの方々が無条件に仲良く出来る姿など。その上で両者の対応に関してユリアシティ側がどういった対応を取るかと言えば、まず謡将達に抗議か抵抗かといった所でしょうが・・・そうなった場合の謡将達からすれば、最早ユリアシティという存在は不必要と言う以外にありませんしむしろ預言を正しいと信じる者達の最後の砦です。ですので謡将がユリアシティの方々に対して行うことが何かと言えば、全てを捨てて命乞いして降伏するような方以外は皆殺し・・・といった結果だったでしょうね。肉親がそこにいようがいまいが、お構いなしにです」
「お、お祖父様まで・・・!?」
「兄が同じ血を引く肉親に手をかけるわけがないと信じたいのかもしれませんが、謡将を預言の為に犠牲にしかけたのにそれを全く気にせず預言を実行させる為の実行者にさせていたのですよ。例え謡将が平気なフリをしていて、大丈夫だなどと考えたとしてもです・・・それを踏まえれば例え肉親とは言え、いえ肉親だからこそ許せないという気持ちを抱いていてもおかしくはないのですよ。肉親に間接的にとは言え何も知らされず殺されかけたと考えれば、自分は大切な肉親ではないのか・・・とね」
「・・・っ!」
孔明はそんなリアクションに呆れを滲みださせながらもいかにヴァン達とユリアシティの住民の間に高い認識違いの壁があるのか、そしてヴァンが祖父に対して恨みを持つことが当然だという根拠を語っていくとティアは呆然とした顔つきになった・・・祖父がヴァンに恨まれるなど考えてもいなかったが、理由として納得せざるを得ない物であると感じた為に。









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