軍師、納める

「ではまだ何かありますか?」
「・・・いや、一先ずはもういい」
「そうですか・・・ではアニス、ルークを部屋に送ってしばらく一緒にいてあげてください。アッシュが何かをしでかすとは思いませんが、一応念のためということに加えて話し相手も兼ねてね」
「はい、分かりました・・・じゃあ行こっか、ルーク」
「あぁ・・・」
それで改めて確認を取る孔明が大丈夫と返ってきた為、アニスに付き添いするように命じるとすんなり頷きルークと共に部屋を退出していく。
「・・・とりあえず大丈夫みたいっすね、ルークは」
「お疲れさまです、くのいち」
孔明一人になった部屋・・・かと思いきや音もなく目の前に笑顔を浮かべ現れたくのいちに、孔明は当然といったよう平然と対応する。
「そちらはどうでしたか、ティアの様子は?」
「一先ずは納得はしてはくれましたけど、やっぱりっていうかモースに関しては複雑以外ないって感じでしたね~。まぁそれでもモースのやってきたことに関して色々知ってきましたから、仕方無いとは感じてはいたようですけどね」
「まぁそうでしょうが、貴女の話を怪しいだとか感じているような様子はありましたか?」
「いえ、怪しむどころか鵜呑みにしてましたよ。旦那様に私が嘘をつくわけないって考えてるんでしょうけど、モースや謡将に騙された事を一切経験として活かしてないっすね本当に」
「・・・私から聞いておいてなんですが、酷いですね本当に」
それでティアについてを質問する孔明だが、くのいちが軽く立場が上の相手を疑う事を覚えない様子を口にすると珍しくも、眉間にシワを寄せて呆れを盛大に滲ませる。
「・・・まぁそれならそれで問題はありません。彼女に下手に疑う心が加わっても、底の浅い疑心では付け焼き刃以下です」
「付け焼き刃以下ですか?」
「言うなら米粒で糊付けした刃を刀に付ける程度の代物です。付け焼き刃は一応は熱を介してますですので強度はともかくちゃんとくっつきはしますが、米粒の糊付け程度では刃が刀に定着などとても出来ませんからね」
「あぁ、確かにそれならその例えの方がティアにはピッタリですよね~。疑うということは考えることなのに、考えることを立場だとかを理由に放棄するなんてのは考えてないも同然の事ですしね」
それで気を取り直す孔明の言葉の中の付け焼き刃という部分に反応したくのいちに、孔明が例えを告げるとカラカラと楽しそうに笑う。ティアの考えなど米粒以下の強度の物でしかないと、そう言っているも同然の中身に納得した為に。
「とりあえずティアに関しては以上にしますが、他の方々についての様子は見てきましたか?」
「はい、勿論です。まぁやっぱりというか、問題を抱えてるのはアッシュですよね。しかめっ面が酷いのもそうですし、何か一人言をブツブツブツブツ呟いてましたし」
「中身についてはどうでしたか?」
「似たような中身の繰り返しですよ。戻りたいけど戻りたくない、戻りたくないけど戻りたい、あの屑を戻したくないがキムラスカにナタリアを任せたくはない、なら俺がキムラスカに戻るべきじゃないのか・・・こんな感じの言葉ばかりブツブツと聞こえて、どうしたいかとはハッキリとは言ってはいませんでしたよ」
「ふむ・・・まぁ予測の範囲内ですね。とは言え話を聞く限りでは彼一人では考えをうまくまとめることなど出来ず、堂々巡りで考えが停滞するのがオチといった所でしょうからやはりこちらが行動を起こすべきでしょうね」
それで話題を変えるように願う孔明にくのいちがアッシュの事を切り出してその様子を詳細に伝えると、改めてアッシュに対する行動の必要性を認識する。










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