軍師、焔達と会う

「・・・ティア=グランツ。今までの話から分かりますね?貴女が個人的な事として通そうとしていたことは、最早そう出来ない物だということは」
「そ、それは・・・・・・」
「反論したいけれどどう反論すればいいか分からない、と言った様子ですね。では改めて質問させていただきますが、貴女はどのような理由で謡将を襲ったのですか?」
「っ・・・コーメイ様達に迷惑をかけたことは謝りますし、配慮が無かったことは認めます・・・ですが兄を襲った理由については本当に個人的な事なので、言えません・・・」
「・・・そうですか。では仕方ありませんね。その理由次第では貴女の事を弁護することも視野に入れていましたが、やむを得ません。こちらの事情聴取に個人的な事と口をつぐんだ為にダアトにローレライ教団と関係無いと示すため、神託の盾を解雇した状態で貴女を引き渡すことにしたとキムラスカに連行させていただくことにしましょう」
「はっ!?」
それで明らかにシュンとしてしまった様子に再度理由について問い掛けるが、そこで尚もそれだけはと話すことを拒否したティアにとって孔明は最大の爆弾をあっさりと放り投げた。
「・・・今までの話を聞いていたでしょう。事は既に貴女個人で済む問題ではないと。ですがそれで済ませたいと言うなら貴女は証拠と共に、謝罪を示さなければなりません。本当に自分が起こしたことが個人的な事なのかの証拠と、そして多大な迷惑をかけたと思うからこその謝罪を」
「で、ですが何故それで神託の盾を辞めてキムラスカに送られるなんて話になるんですか!?」
「こちらからしての貴女が神託の盾と関係無く起こした行動だと示すための方法だからです・・・貴女がダアトや神託の盾と関わりのない個人的な事と強調するよう、このような言い方は望ましくないと知って言いますが我々もまた貴女の行動と関係無く、むしろ迷惑を被った立場だと明らかにしたい。ですがそれもまた、難しい状況なのです。貴女が決して謡将を襲った理由を明らかにしない以上、貴女の行動は我々の謀略ではないかといつまでも疑われると共に、身内だからと過剰に庇い立てをしていると見られてもなんらおかしくありません」
「庇い立てって、どうして・・・」
「話などでよくあるでしょう。権力を持つ親の子どもが罪を犯したが、その親の影響を考えてしまい二の足を踏むといった状況が。ここでその親が子どもを突き放し罪を裁いてもらうようにと動けば万事滞りなく進む事が出来ますが、そういった話の親子は大抵罪を認めないかもしくは子どもの引き渡しに渋る物です。我が子可愛さもあるでしょうし、その子どもの罪が明らかになることにより親の威光が減退されるのを恐れるといった形でね・・・ただそのようなことは他者から見れば感心出来る物ではないということは一目瞭然ですし、批難を浴びてもなんらおかしくない行為です。それなのに貴女からその理由を明らかにしないばかりか、どういった処罰を与えるかもハッキリさせないようであればダアトが身内だからと貴女を庇っている・・・そう言われても全く不思議ではないんですよ。それが分かりませんか、ティア=グランツ?」
「っ!・・・だから、私を解雇して、キムラスカに引き渡すと、言うんですか・・・庇っているなんて、言われない為に・・・」
「厳密には貴女が責任を取って自ら辞める事を選択するか、それでも自分にはそんなことをされる筋合いはないと抗議して私に辞めさせられるかのどちらかになります。再度言いますが、貴女が謡将に襲い掛かった理由の如何次第では私も貴女を多少なら擁護する事も検討しようかと考えていましたが、それを拒否した以上貴女に残る選択肢は最早その二つしかありません・・・さぁ、どうしますかティア=グランツ?どちらを選びますか?今ならまだ貴女が謡将の事を言えば間に合いますよ」
「っ!?・・・・・・・・・」
・・・孔明の論客としての才覚が余すところなく発揮された瞬間であった。
矢継ぎ早に話を理路整然と進めていく孔明にティアはなんとか反論していくが、次第に逃げ場を潰されていった上で選択肢を向けられた事に最後の救いまでもが追加された事に愕然とした表情のまま冷や汗を顔中に浮かべながら静止してしまった。どうすればいいのか分からない・・・ティアの頭の許容範囲を越えた問題を前にしてしまい。









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