軍師、納める

「・・・なぁ、思ったんだけどなんでお前は俺を助けようとしてくれんだ?自分で言うのもなんだけど・・・俺を助けてなんか得がお前らにあるとは思えねぇんだけどよ・・・」
だがそこでルークはふと何故孔明が自分を助けようとしてくれるのかと、辛そうに表情を歪める。自分はアッシュの偽者であり、助けられるような価値のある者なのかという気持ちを抱く形で。
「・・・その事に関しては損得勘定で貴方を助けるわけではありませんよ。強いて言うなら助けたいから助けるといった気持ちからで貴方を助けようと考えたのです」
「え・・・?」
だが孔明が微笑と共に返した言葉は理屈ではないといったある意味ではらしくないとも言えるもので、ルークはどういうことかと戸惑う。
「貴方からすれば意外でしょう。私らしくもない判断ではないかと。ですが私も生きている一人の人間ですから、当然私情というものは持ち合わせています。そしてその私情が貴方を助けたいと思わせているんですよ」
「・・・何か本当に意外だわ・・・そういった風に考えるんだな・・・」
「本当に私情のない人間は却って人間に程遠い存在です。譜業仕立てのように決まった考えに行動しか出来ず、何かあっても自分の行動や思考に疑問を差し挟むことがない・・・例え人を殺せと言われても、心に波風一つ感じずに対象を誰であろうとも殺せるようにです」
「っ!・・・例えは物騒だって思うけど、お前の言うことは分かる気はする・・・本当にそんな奴がいるなんて思いたくはないけどな・・・」
そんな姿に自分が人間だと共に感情のない人間ではないと強調するような例えを用いる孔明に、ルークも分からないでもないと受け止める。
「それにシンクの事は謁見の間で聞いたでしょう。現在彼に今のイオン以外の兄弟は人目につかないところにこそ行ってはいただいてはいますが、ちゃんと生きています。謡将に大詠師を騙すためとはいえ生まれてきた命ですからこそ、私の責任もあると思って彼らの生活は支援させてもらっていますよ」
「あぁ、そういえばそんなこと言ってたけど・・・そいつらってダアトの中で暮らしてるのか?」
「流石にダアトではどう人目につくか分からない部分がありますし、何よりダアトやその近辺の隠し場所に適した場所は大抵謡将が使っていましたからね。ですから我々の協力者の元に彼らは預けています。ダアトには関係のない場所でね」
「協力者・・・そんなもんまでいるのか?」
「えぇ。そちらの方々との利害関係は一致していましたから、色々と頼んだり頼まれたりしています。時折妻達に行ってもらったり、妻に私の身代わりをしてもらう形で私が直に向かい彼らと話す形でです」
「・・・そうなのか・・・つーか便利っていうか、何でも出来るよな・・・あいつ・・・」
「ふふ・・・彼女にはいつも助けられていますよ」
更にその証拠にとシンク達の兄弟が今どこにいるかを話すと共に協力者の存在についてを明かす孔明は、協力者との接触にくのいちの行動がかなり役立っていることに感心するルークに対して微笑みを浮かべる。
「・・・だから、と言うのもなんですが私を信じてはいただけないでしょうか?貴方の事を害するような事をするつもりは貴方が敵対するような事をしなければありませんが、それを信じるか信じないかは貴方次第です」
「俺次第、か・・・」
「ねぇルーク、お義父さんを信じて・・・私もお義父さんに助けられた身だからさ・・・」
「アニス・・・?」
そして改めて信じるように願う孔明にルークは表情を固くしたままだが、そこでアニスが切に願う声を向けてきたことに怪訝そうな表情に変わる。









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