軍師、納める

「えぇ。だからこそ厄介なのは、アッシュがキムラスカに戻らないとなればどのような行動を取るか分からないことになるのです。現にどこにも行かないと言っている彼は同時にさしあたっての目的もない・・・ですがそこでルーク様への怒りを抱き、それを当人にぶつけるなどの行動を後に取ったなら・・・」
「・・・どう考えてもろくな結果にはならないでしょうね・・・それでルークを失わせるだけ失わせ、アッシュが消えるとなればそれこそ最悪な結末が訪れる以外に有り得ないでしょう・・・タイミングにもよりますがナタリア様が本当の王族でない以上、以降も生まれてくるであろう子どもが紅い髪に緑の瞳を全く持たないとなったなら・・・お家断絶も避けられなくなることも・・・」
「「・・・っ!」」
そんなアッシュの行動でルークもそうだが、キムラスカも苦境に陥りかねない・・・孔明の言葉に公爵はそう感じて声を漏らし、ルークとアッシュは愕然としたようにその言葉に目を見開いた。



・・・孔明やくのいちのいた世界では姿形はあまり君主や一族の血統であることに繋がることはないが、キムラスカでは紅い髪に緑の瞳が王族の証とされてきていて長い歴史の間でその特徴を保てるようにと色々と昔の王族に貴族達は活動してきた。

だがそれもナタリアが本物のナタリアではないという事実があることに加え、公爵が言うようにナタリアとの子どもをルークが作れないままにアッシュがルークを殺して以降は全く音沙汰がなく姿を消したとなったなら・・・もうキムラスカの王族の血は途絶えたも同然となる。例え黙っていたとしてもナタリアが生んだ子ども以降に生まれてくる子どもが紅い髪に緑の瞳という条件を満たしていなければ、バレることもそうだが王族の権威の失墜は避けられなくなるだろう。今まで保ってきたものが無くなったということは預言の影響がある内ならこれが預言だと、孔明達がその影響を無くした後なら天命だといったように言われる形でだ。

そうなれば以降の王族が王族としていられることは難しくなるのは避けられないだろうし、それこそ権力を握ろうと野望に燃える輩に全力で排除にかかられる可能性もあるだろう。それほどにキムラスカの王族のシンボルとして紅い髪に緑の瞳は重要視されている、ルークとアッシュもよく聞かされてきた事な為に・・・だからこそ活きてくるのだ。この二人の問題に関して。



「・・・ですが今先程申し上げましたよう、アッシュの行動というものは重要になります。勿論ルーク様もですが、現状では彼の方が大きな問題となります。今の彼の気持ちに言葉通りにすることは、それこそルーク様のいずれの身の危険に繋がりかねない可能性は十分に有り得るでしょう」
「待たれよ、丞相・・・そちらの言い分は分からぬでもないが、流石にそれは言い過ぎではないのか・・・?」
「陛下がそうおっしゃるのであれば、アッシュ・・・貴方は今話したようなルーク様への気持ちに行動を我慢し、何事も起こさぬと自信を持って言えますか?もしくはそうしないにしても、ルーク様の事を良くも悪くも伝え聞いたとして白波一つ立てないほどに心穏やかに自分が何も起こすことなく過ごすことが出来ますか?」
「っ!・・・っ・・・」
「・・・アッシュ・・・」
そんな可能性は十分に有り得ると話す孔明にインゴベルトが考えすぎではといったように声をかけるが、その証拠とばかりにアッシュへとルークへの気持ちについて問うと、決して嘘でもそんなことはないと言いたくはないと言ったようになりながら誤魔化すように視線を反らし、その姿に大げさではないのだとインゴベルトも感じ取りその名を呟く。ルークに対して根付く怒りは決して浅い物ではないのだと感じて。









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