軍師、納める

・・・モースという現在残っていた最大の障害も無事に排除し終わり、孔明達はインゴベルトからの勧めにより城の中の会議室に移動した。



「・・・さて、場を変えた所で改めて礼を言わせてもらおう。そちらのおかげで我々も色々と知ることが出来た。礼を言おう」
「いえ、お気になさらず」
・・・それで部屋の奥側の席に公爵を横につけて座るインゴベルトの声に、対面上に座った孔明は微笑を持って首を横に振る。他の面々も近くの席に座っている。
「・・・それで早速だが、まだ謁見の間で話していなかった事について話してもらおう。そちらはそのつもりでここに来ているのだろうが、出来るなら早く話を聞きたい」
「はい、ではまず大詠師を裏で補佐する方々についてですが・・・陛下はご存知でしょうか?ユリアシティと呼ばれる場所が存在することは」
「ユリアシティ・・・いや、聞いたことはないが・・・そこがモースの補佐をしていた所だと言うのか?それにユリアの名を冠する事も少し気になるのだが・・・」
それで早速と本題にと要求されて孔明はまずはユリアシティの事を切り出し、インゴベルトは知らないと返しつつも興味を示す。
「ユリアシティはダアトの中でも限られた一部の者しかその存在を知らぬ地であり、魔界に今も存在していて人が住める土地です」
「何っ・・・魔界にそんな土地があることもそうだが、何故そんな土地と交流のような事が出来るのだ・・・?」
「それはユリアロードと呼ばれる外殻大地とを繋ぐ道があるからです。ユリアロードを用いれば外殻大地とユリアシティの行き来は自由であり、その土地に住まう方々は幼い者であったりティア=グランツのように分別のついていない者を除き、いわゆる預言を実行することを最上の目的とした者達が住まう場です。そして大詠師が陛下にお告げになられた預言の譜石の元々の所有者でもあります」
「ふむ・・・その言い方では何処と無く所有者は人ではないと言ったように聞こえるが・・・」
「ユリアシティの方々は代々預言が成就するようにと陰ながら動いていきました。その役目があるからこそ譜石は個人が所有すると言うのではなく、ユリアシティが管理していると言った方が正しい認識になります」
「成程・・・個人が所有している訳ではないと言うことか・・・」
孔明はそんな様子に対してユリアシティについての話をし、インゴベルトはその中身に納得する。ユリアシティはそういう場所なのだと。
「だが大丈夫なのか?そのような場所であるというのに、モースを捕らえるというような事をしたなら何かしらの行動なり報復なりを受けるのではないか?」
「確かにその可能性については懸念されますな・・・」
しかしインゴベルトのふとした疑問に、公爵も同意して表情を固くする。ユリアシティがモースの事で何かしらの行動を仕掛けて来るのではないかという可能性に。
「勿論その危険性については重々承知しています。ですので我々はバチカルより発った後にはダアトに戻る前にユリアシティへと立ち寄り、事の経過についてを話しに向かう予定です」
「何・・・それは危険ではないのか?モースを補佐する役割があるということは、思想としてはモースに近いのではないのか?」
「確かに預言の保守の為の姿勢は大詠師と同じような物になります。ですがユリアシティの代表である市長は謡将の祖父にあたる方になりますので、そこを足掛かりに話を進めていく予定です」
「何・・・ヴァンの祖父がユリアシティの代表・・・?」
対して孔明は何ら動揺することなく今後の予定について話していき、インゴベルトはその話の中に出てきたヴァンの祖父について眉を寄せる。そんな人物なのかと。









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