軍師、圧倒する

「ふむ・・・すまぬが、もうモースはこの場から連れていってくれ。出来ればこちらはまだそちらと話をしたいが、モースにいられてはどうにか発言しようと耳障りな声を上げようとするだろうからな」
「分かりました。ではシンク、轡を噛ませて船まで連行してください」
「はっ!」
インゴベルトは見限りをつけたとその光景にさっさとモースを退場させるように言い、孔明がシンクに命を出すと手早く連行の準備に入る。
「丞相、私も船まで共に戻りましょう。シンク殿だけに負担をかけるわけには行きません」
「ありがとうございます、フリングス少将。では後はお願いします」
「「はっ!」」
「っ・・・っ!」
するとフリングスが自分も行くと言い出し、孔明が礼を言って送り出すと二人ともに威勢のいい声を出しながら出口に向かう。縄による拘束も済んで何も喋れないまま、どうにか抵抗しようとしているモースを引き連れる形で。
「・・・さて・・・色々言いたいことはあるが、まずは礼を言わせてもらおう。そちらの都合もあるのだろうが、そちらのおかげで色々と知ることが出来た。おそらくそちらの行動が無ければ我々はモース達共々預言に詠まれた内容をなぞる形で滅びることになったか、もしくはヴァン達の行動で場合によればその預言以上の損害を被っていた可能性もあったであろうからな」
「いえ、礼には及びません。こうして陛下達にご理解いただけた事が何よりの物ですので」
「そう言ってもらえるとありがたい」
それでシンク達が謁見の間から出た後にインゴベルトが公爵共々頭を下げ、孔明が謙遜の言葉で返すと穏やかな表情を浮かべる。
「・・・丞相、一つお聞かせ願いたいのですが・・・ルークもそうですが、アッシュ・・・二人の事についてはどのようにするとお考えなのでしょうか・・・?」
「「っ!」」
「む・・・それは確かに気になるな・・・」
だがそこに公爵が気まずげに切り出した二人についての問い掛けに、対象のルークとアッシュの二人はびくりと体を揺らしてインゴベルトも表情を引き締める。
「その件に関しましては後の話もありますが、しばらく時間をいただけないでしょうか?お二人の気持ちもそうですが陛下達がどのようにお二人の事を考えられるか、その意見と擦り合わせなければ後の禍根になりかねませんので」
「・・・禍根?」
「その辺りの事も含め、お話いたしますが・・・時間はよろしいですか?」
「それは大丈夫だが・・・少し場所を移そう。そちらの言い方から察するにまた込み入った話になるであろうし、そちらも立ったままずっと話をするのは疲れるであろうからな」
「お気遣いありがとうございます」
孔明は即答は出来ないとしつつもまだ話すことがあると言って時間の確認を取ると、インゴベルトが場所替えを気遣って切り出したことに後ろのくのいち達と揃って頭を下げる。場所替えを受け入れると。















・・・障害は取り除かれ、平和への道は開かれた



稀代の軍師の弁論によって開かれた無血の道



その道を確固たる物へとすべく、更に進む・・・



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