軍師、圧倒する

「ではティア=グランツの身柄の引き渡しに関してはまた後程に話をさせていただくとしますが、彼女がこの場での話を聞いていたなら今申し上げましたように自分の身の危険・・・裁かれると分かったなら、それこそ第七譜石の事についてを誰が聞いているかに場所がどこかなど形振り構わず口にする可能性は十分に有り得るでしょう。ですが我々としてもそうですが、陛下もそのような事態になることは望みはしていないはずです」
「それは勿論だ。第七譜石の件については完全にそうだという物証は無いにしても、話を聞く限りではティア=グランツは兄の動機だからとそれを疑うことをせず、そして自分の処分についてを口にされたなら自分がこの問題に係わらなくてどうするのだと猛抗議をするだろう・・・だが今考えもなくそのような事を明かせば事態が予測出来ぬ方向に流れかねんが、その中で最もまずいのは混乱が起きる中で外殻大地の問題に関して案を練ることも対策を取ることも出来ぬことだ。もしそうなれば預言を達成させるどころか、国の安定を図るだけで手一杯になる。それらを考えれば確かにティア=グランツをこの場に来させなかったのは正しいと言えよう」
そんな様子にティアの事が懸念材料だと話す孔明にインゴベルトも納得する。その考え無しの行動の後始末を行うのはまず確実であり面倒になることを避けるのは妥当な判断だと。
「改めて貴殿方にこの話を事前にしていなかったことについてはお詫び致します。ただこの件に関しましてはみだりに誰それと口にすることははばかられるような物であることは話を聞き、理解されたと思われますが」
「えぇ、それは。ですが流石に今の話に関しましてはピオニー陛下には報告はさせていただきます。このような重要な話を私にフリングス少将だけが知るわけにはいきませんからね」
「それは勿論ですが、陛下以外には情報は出来るだけ漏れぬように秘匿していただくようお願いします」
「それは勿論です」
そこから孔明がアッシュ起ちに理解が出来たかを投げ掛け、ジェイドが理解と共に確認をしたことに頷いて慎重にするよう伝えれば頷き返してくる。
「あ~・・・俺も言わねぇよ。そんな大事になるっていうんならティアにもそうだけど他の奴にも言うわけにはいかねぇって分かるし、世界が混乱するなんてのも嫌だしよ」
「・・・ではアッシュ、貴方は?」
「・・・俺も一々そんなことを言うつもりはねぇよ。この屑に同意するような事を言うのはシャクだが、俺だってそんなことで世界が混乱してこっちにまで被害が来るなんてのは望んじゃいねぇからな」
「ありがとうございます、そう言っていただいて」
続いてルークも複雑そうにそうしないと返し、孔明は何か言葉にするのを躊躇っているようなアッシュに問い掛けると極めて不本意そうな返しに全く気にした様子もなく礼の言葉を返す。
「ぐうっ・・・がぁっ・・・!」
「・・・何か言いたそうに主張していますね。シンク、少し拘束を緩めてください。声が出るくらいにね」
「はい」
そこにモースが苦しそうにしながらも必死に声を上げようとしている様子に、仕方無さそうに孔明はシンクに命を下す。声を出させる程度に力を緩めるようにと。









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