軍師、圧倒する

「各地のセフィロトにより支えられるパッセージリングが消滅した際の衝撃による耐久力の著しい低下・・・これはどうしても避けられることではなく、もしアクゼリュスが消滅した後に預言通りに戦争を起こしたとしても両軍がぶつかる場所であるパダン平原を支える大地が崩壊すれば、両軍ともに戦うなどといった状況にならないというのはお分かりになるでしょう。大多数の兵がいなくなることに併せ、例え無理にでも戦おうと決断をしたとしてもいつ足元のこの大地が崩れ落ちるか分からぬ不安は兵に民達を大丈夫という言葉だけで落ち着かせることなど到底出来ません。そしていかに自身らも落ち着こうとしたところでその恐怖は拭いきれぬでしょう・・・何せ預言にも詠まれていない事柄が起こったばかりか、下手を打てば自身らまでもが世界共々滅びる可能性まですら出てくるのですから」
「・・・確かにその通りだが、それも今こうして預言に詠まれていないプラネットストームによって循環する第七音素により外殻大地が浮遊していることが理由だというのか・・・」
「はい。アクゼリュス消滅という事柄に関して詠まれているのに、規模だけで言うならばパダン平原とその近辺というアクゼリュス以上の領域の地が落ちることが詠まれないなど規模の面から見てもまず有り得ることではありません。ですがパダン平原は両軍が激突及び正面からの決戦をキムラスカとマルクトが行うなら、ここ以上に適した土地などありません。それにですが第七譜石の中身には要塞の街に死体が高く積まれた、と言ったような中身があると聞きましたが・・・パダン平原が落ちるとなればかなりの高確率でマルクトにおいて要塞の街と呼べる街であるセントビナーもまた、その崩落に巻き込まれるかその影響を多大に受けるのは間違いないでしょう。そしてそこでセントビナーが完全に消滅してしまったとするなら、最早預言の通りにするなどといったことなど出来ません。その時には預言に詠まれている筈のセントビナーが存在せず、無い物をいくら探したところで存在などしないのですからね」
「「「「・・・っ!」」」」
更に孔明はパダン平原が落ちることの影響とそこに預言が詠まれてない事、その上でセントビナーの消失が第七譜石の中身に沿わなくなるとの言葉を口にすると孔明一派以外・・・特にモースの驚愕は凄まじく、冷や汗か脂汗かあるいは両方をダラダラ顔から流しながら目を剥いて静止してしまった。いくら預言に対して疑うことを知らないで盲目的な判断をするモースとは言え、後で滅びるとは言え預言に詠まれていない時点で消失が確定して二度とその地が戻ってこないとなれば事の重大さが身に染みて分かったようだ。第七譜石の預言を達成出来なくなるというその意味が。
「そういった点を踏まえれば本来であれば外殻大地が空に浮かぶような事が無ければ、預言通りになっていた可能性は十分に有り得たことであると思われます。アクゼリュスの消滅は大地そのものが崩落して魔界に落ちるような事にはならなくとも、地を掘り起こしていきその壁面を利用する形で街を造り上げていったのですから、一番下の地面の地盤が大きな衝撃により被害を受ければ流れるようにアクゼリュスの街を構成する地が崩れ落ちて、残るは街の跡で街として機能することを見込めなくなり消滅と見られることになる・・・ということは十分に起き得る事でしたでしょう」
「・・・そして外殻大地として空を浮かんでいない以上はキムラスカとマルクトの戦争が止まる要因もなく、預言通りに戦争が起きただろうということか」
「そういうことになります」
それで外殻大地が空に浮いていなかった場合のアクゼリュスの消滅についてを語り、インゴベルトも苦々しく察したという様子に頷いて返す。外殻大地でなければ預言通りになって予期せぬアクシデントもなく、誰も戦争を止められなかっただろうと。









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