軍師、圧倒する
「貴方が望む自らの配下の理想像は自分の意を理解して、何も言わずとも配慮して動いてくれる者にあります。ですがそれは自分の意以外を求めず、見ようとしない行為に他なりません・・・だからこそ簡単でした。貴方の望む部下を演じることは」
「か、簡単だっただと・・・!?」
「えぇ。面倒な事は率先して行うばかりか、時には自身では考えがつかない事案についてを解決してくれる・・・そういった都合のいい存在です。ですがそこに貴方への忠誠といったものがあるかどうかなど、貴方は全く気にしたことなどなかった・・・そんな貴方の懐に潜り込んで活動することなど容易い事でした。一度入り込んで表向きに怪しい行動が見えなければ貴方は何も私に疑いを向けることなどありませんでしたからね・・・ただそれでも貴方に何か恩義を感じたなら私もこうは言わなかったでしょうが、貴方に恩義を感じるような事などありませんでした」
「な、何だと・・・!?」
それで孔明が次々と発していく言葉にモースは怒りを覚えはするが、戸惑いも同時に覚える・・・自分を裏切ったことが許せないのは当然ではあるが、自分は恩義を孔明に感じさせるようなことをしていなかったのかと。
「・・・自分が偉い立場にいる上で、敬われる立場にいるとそう思われるのは結構です。自覚が人の行動に大きく関わるのは確かな事実ですからね。ですがその立場にかまけて本来自身で行うべき仕事を行わず側近の私に全てを押し付けるばかりか、礼に労いの言葉を一言たりとて送ることもなくさも当然とばかりに振る舞っていた・・・それでもその方の役に立てるならと思われる方も中にはおられるかもしれませんが、少なくとも感謝の念を一度でも形として現す事も無かった貴方に感謝や恩義を感じるような事など私にはありませんでした」
「なっ・・・!?」
「その程度の事かだとか私の手足として動けたのだからむしろ光栄に思うべきだといった考えになっておられるのでしょうが、貴方が私に感謝したことなど一度たりとて無いのは間違いない事でしょう。それに今でこそ貴方は大詠師という地位について導師の事があるので実質的に自分がローレライ教団の中で一番偉いのだという自負がおありでしょうが、地位としてまだそこにまで登り詰めていない時代の事を思い出して感謝の意を伝えたりせずに横暴で慇懃に自分に接するような上の身分の方に対して、全く何も思うところが無かったなどと自信を持って言えますか?」
「・・・っ・・・!」
そんな姿によくわかるようにと孔明としての立場に加えてモースの昔を思い出させるような話をする孔明に、怒りを浮かべかけたモースは苦い顔をしつつも反論が出来なかった・・・モースは腹芸はそこまで苦手という訳ではないが、それでも身分が低かった時代の事は今思い出せば自分にとって心地好くない時代だったからこそ思わず表情に出て何も言い返せなかったのだろう。
「無論、私もそれだけで貴方を恩義を感じないだとか蔑ろにするような選択をしたわけではありません。私が貴方に恩義を感じるような気持ちに考えなど浮かぶはずもないと思えた決定的な出来事は・・・貴方に謡将が預言に死が詠まれた兵士を躊躇いなく戦場に送り出すその姿にありました」
「な、何だと・・・!?」
だがまだあると決定的な事を口にする孔明にモースは戸惑いを浮かべる中で、その姿をリグレットは怒りをこらえるように歯を噛み締め拳を力強く握り締めて見ていた。
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「か、簡単だっただと・・・!?」
「えぇ。面倒な事は率先して行うばかりか、時には自身では考えがつかない事案についてを解決してくれる・・・そういった都合のいい存在です。ですがそこに貴方への忠誠といったものがあるかどうかなど、貴方は全く気にしたことなどなかった・・・そんな貴方の懐に潜り込んで活動することなど容易い事でした。一度入り込んで表向きに怪しい行動が見えなければ貴方は何も私に疑いを向けることなどありませんでしたからね・・・ただそれでも貴方に何か恩義を感じたなら私もこうは言わなかったでしょうが、貴方に恩義を感じるような事などありませんでした」
「な、何だと・・・!?」
それで孔明が次々と発していく言葉にモースは怒りを覚えはするが、戸惑いも同時に覚える・・・自分を裏切ったことが許せないのは当然ではあるが、自分は恩義を孔明に感じさせるようなことをしていなかったのかと。
「・・・自分が偉い立場にいる上で、敬われる立場にいるとそう思われるのは結構です。自覚が人の行動に大きく関わるのは確かな事実ですからね。ですがその立場にかまけて本来自身で行うべき仕事を行わず側近の私に全てを押し付けるばかりか、礼に労いの言葉を一言たりとて送ることもなくさも当然とばかりに振る舞っていた・・・それでもその方の役に立てるならと思われる方も中にはおられるかもしれませんが、少なくとも感謝の念を一度でも形として現す事も無かった貴方に感謝や恩義を感じるような事など私にはありませんでした」
「なっ・・・!?」
「その程度の事かだとか私の手足として動けたのだからむしろ光栄に思うべきだといった考えになっておられるのでしょうが、貴方が私に感謝したことなど一度たりとて無いのは間違いない事でしょう。それに今でこそ貴方は大詠師という地位について導師の事があるので実質的に自分がローレライ教団の中で一番偉いのだという自負がおありでしょうが、地位としてまだそこにまで登り詰めていない時代の事を思い出して感謝の意を伝えたりせずに横暴で慇懃に自分に接するような上の身分の方に対して、全く何も思うところが無かったなどと自信を持って言えますか?」
「・・・っ・・・!」
そんな姿によくわかるようにと孔明としての立場に加えてモースの昔を思い出させるような話をする孔明に、怒りを浮かべかけたモースは苦い顔をしつつも反論が出来なかった・・・モースは腹芸はそこまで苦手という訳ではないが、それでも身分が低かった時代の事は今思い出せば自分にとって心地好くない時代だったからこそ思わず表情に出て何も言い返せなかったのだろう。
「無論、私もそれだけで貴方を恩義を感じないだとか蔑ろにするような選択をしたわけではありません。私が貴方に恩義を感じるような気持ちに考えなど浮かぶはずもないと思えた決定的な出来事は・・・貴方に謡将が預言に死が詠まれた兵士を躊躇いなく戦場に送り出すその姿にありました」
「な、何だと・・・!?」
だがまだあると決定的な事を口にする孔明にモースは戸惑いを浮かべる中で、その姿をリグレットは怒りをこらえるように歯を噛み締め拳を力強く握り締めて見ていた。
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