軍師、圧倒する

「さぁ大詠師・・・お聞き致しますが、査問を行う為に我々と共にダアトへお戻りいただけますか?」
「っ!・・・へ、陛下・・・」
「・・・何故そこでわしを見ると言いたいが、大方自分が連れていかれるのを黙ってみていないでほしいがそなたの胸中なのだろう。だからこそ言わせてもらうが・・・わしはそなたを擁護などせん。むしろ悪あがきをするのであればそなたを丞相に引き渡す事を選ぶ」
「なっ・・・!?」
そして査問の為に素直に戻るか確認を取る孔明にモースはまさしく助けを求めるような視線をインゴベルトに向けるが、鬱陶しそうにしながらもハッキリ一蹴すると言った答えが返ってきた事に何故とばかりに言葉を失う。
「どうしてという気持ちを抱いているのだろうが、そなたはダアトの人間でありローレライ教団の大詠師という立場の人間だ。その上でそなたが起こした行動についての査問というローレライ教団の人間としての是非を問う為に必要なことを、何故キムラスカの人間であるわしが止めねばならんのだ・・・と言うのは表向きの建前だ」
「た、建前・・・?」
「・・・本音を明かすならナタリアの入れ換えの件を始めとして我々を謀った上に、ヴァンの行動についての実態を何も知らず知ろうとも考えようともしなかった者の事など最早信用出来ん・・・!」
「「「なっ!?」」」
インゴベルトはその様子に建前を告げた上で本題だと本音を怒りを抑え滲ませるような様子で口にしたことに、モースだけでなくルークにアッシュまでもが何をという驚きに声を上げた。
「・・・陛下、ルークにアッシュの反応が何も知らなかったと言ったような驚きに見えますが・・・」
「へ、陛下・・・」
「黙れモース。今何か発言するなら即刻そなたを拘束しても構わんのだぞ」
「っ・・・!」
その様子を見逃さなかった公爵の進言にモースは誤魔化そうとするが、すかさずインゴベルトの脅迫めいた言葉に沈黙せざるを得なくなる。下手に動けないとなってしまったが為に。
「して、丞相・・・二人は事実を知らなかったのか?」
「はい。真実を知ってもその真実をみだりに口にしてもいいものかどうかについて考えた際に、まだ我々以外に容易に話をしてもよろしい状況ではないと考えて敢えて何も言わないままでいました。もし何か誤解を生んだというのでしたら、慎んでお詫びいたします」
「いや、構わん・・・そのような気遣いをそちらがしたのに対し、わしが単に早合点をしただけなのだからな」
「お、叔父上・・・ナタリアの入れ換えとは、どういうことなのですか・・・!?」
「・・・ふむ、どうせならハッキリと言葉にするか。もう吐いた言葉は取り消せん事だし、色々と知ってもらった方がいいであろうからな」
そこから孔明にどういうことかと理由を聞いて返ってきた慎重さの伺える答えにインゴベルトは構わないと返すが、アッシュが動揺を隠せないままに発言の意味についてを聞いてきた為に詳しく話そうと頷く。
「とはいえあまり長くなっても後がつかえているから簡単に言うが、ナタリアがアクゼリュス救助の一団に無断で付いていこうとバチカルを脱け出した後でどうにかナタリアを呼び戻そうと考えていた時にモースがこう言ったのだ。本物のナタリアは死産という形で産まれ、それを誤魔化す為に今のナタリアと入れ換えたのだとな。そしてその証拠があると我々は聞かされ、その言葉が嘘ではないことを確かめた・・・ナタリアが偽物のナタリアであることをな」
「「・・・っ!」」
「・・・最も、それを自分の都合のいい展開とするためにそのタイミングで明かしたのがそこのモースだがな」
「っ!」
インゴベルトはそこから簡潔にナタリアの事実について嘘ではないと言って二人はまさかと息を呑むが、それ以上に息を呑んだのがモースである・・・明確な敵意と呼べる視線と言葉が向けられた為に。









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