女忍、影に動く

「先程申し上げた第七までしかユリアの詠まれた預言が無いのかという疑問に関して、陛下と同じように無条件に繁栄が訪れるからだという風潮があるからこそ大半の人々がそういった物だと思っていますが、物事を考える以上はいい予感のするものだけが思考の選択に出てくるわけではありません。昔の研究者の中には第七までしかないのは繁栄ではなく、終末が詠まれているのではないか・・・と言った事を申し上げた者もいました」
「な、何だと?だがそんなことを言ったものがいるなど、歴史の中で聞いたことなどないぞ・・・?」
「それは当然です。そういった考えは預言を尊び繁栄の為だけに存在すると考えるローレライ教団の者からすれば、異端な上に到底考えることすら認められる物ではない考え方・・・故にそういった主張を唱えた者はそんな考えを持っている者がいると人々に認知されることすら許されない形を取られ、内密に処理されてきたのです。現にそういった考えをまとめたレポートはいくつかダアトの書庫の中には存在しており、その著者は揃って謎の失踪に唐突な処罰を告げられ処分された・・・と言ったようになっていましたが」
「ちょっと待て・・・何故そのようなレポートがまだ存在しておるのだ?そんなレポートなど書いた者共々処分されるのが火を見るより明らかだと思うのだが・・・」
「ダアトの書庫は広く、また創世歴時代から保管されている禁書なども含まれた書物などが多数ある所もあり、ほとんど人の手が入らず単に書物の置き場と化している場も多々あります・・・丞相に私がレポートを見つけたのは揃ってそのような場所でいて、近い場所にありました。おそらくは預言について様々に研究をしていく内に同じような場に辿り着き、考えを深めていく内にレポートをまとめるなどして預言についての仮説を発表をしようとして封殺され、結果としてあまり誰も近付かない場に似たようなレポートが置かれたのだと思われます。大半の人々が考えようとも必要ともしないで放置されたからこそ、処分もされずにひっそりと」
「・・・そんな物にそんなことがあったのか・・・」
くのいちはそういった考えを持つ者は昔にも少数は確実にいたとその根拠に証拠についてを話していき、インゴベルトは公爵共々歴史の闇に触れる事実であった為に複雑そうな表情を歪める。仮説を発表することすら許されなかったのかと。
(この辺りは同情はするけど、やり方だったり何だったりをちゃんと踏まえなかった結果なんだよね~。まぁ昔の事だし、政治や人の感情について全く考えてなかったんだろうからご愁傷さまとしか言いようがないよね)
そんな二人を見つつ、内心は意外とドライにくのいちは考える。方法がよくなかったと。



・・・くのいちがドライな考えを抱いている理由は前世で似たようなことをした上で、もっと壮絶な事をした者がいることを知っているからである。相容れないから、敵と断じたからと山を焼いたりなどしてきて魔王とまで呼ばれた人物の事を。

その人物とは生まれてきた時代が多少違っていたために出会うことはなかったが、それでもその苛烈さについてはくのいちも十分に伝え聞いてきた。そしてその相手方も立場に思想があってこそ相対してきたからこそ、その壮絶な結果が生まれたのだと言うことも。

・・・理により動くことを考えたなら、その魔王でもやり方を変えるなどして被害がないようにとの方向転換をしただろう。だが人とは理だけで動けるようなものではなく、こだわりや信念などを持ってそれらを優先させてしまう事が多い生き物である。そしてくのいちはかつての自身と自身の主も含め、信念を貫いたが故に死んだ者達を多く知っている。

だからこそ詠まれたに疑問を持って動いた者達の気持ち自体は理解しつつも、利口でいてうまいやり方を考えられなかった者達に対して同情など抱かなかった。同じような立場の者達についてを知っている上で、そんな者達の事を利用しようとしているのだから・・・








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