女忍、影に動く

「他にもまだ要因はありますが、アッシュが謡将に対して不信を抱く理由は確かに存在しています。それ故に我々は謡将からアッシュが離れようとしていたこともあり引き剥がすことが出来たのですが、ここで一つ問題があります・・・それは彼の心中にはキムラスカに戻りたくないという気持ちも確かに存在していることです」
「なっ・・・い、いや・・・経緯を思い出す限りでは、そうおかしな事ではないか・・・特にヴァンから言われたであろう事を考えれば・・・」
「えぇ・・・ですが奥方に丞相はそういった気持ちを踏まえた上で、アッシュを連れてくるとおっしゃっています・・・どうやってそんなアッシュを引き連れてなど出来たのでしょうか・・・?」
それでアッシュのことを掘り下げていくくのいちに、二人の会話の流れが連れてきた方法への疑問になる。
「簡単な話です・・・謡将の元を離れキムラスカに戻らないといった気持ちを抱くアッシュですが、更に言うならダアトにもいるつもりはないといったように言いました。その上でならマルクトに行くつもりがあるかとまでは確認はしていませんが、そういった事を考えているといった素振りもまたありませんでした・・・つまりアッシュの状態はどこにも行きたくはないけれど、行動だけは起こしたいという一種のワガママに等しい判断からの物でしたから、我々はそこを利用して捕まえてこう突き付けた訳です。こちらに協力しないのであれば、牢に入れるなり錠に繋ぐなりして無理矢理にでもキムラスカに連れていき何の擁護も無しに身柄を引き渡すと」
「っ!・・・それでアッシュはそちらに付くと決めたと言うわけか・・・」
「・・・アッシュはそれほどキムラスカに帰りたくはないということは分かりますが、話の限りではそちらにも頼ることなく反旗を翻すとは・・・一体どうしてそんな単独ででも動こうなどと・・・」
(そろそろかな・・・大分向こうもこっちの話に前のめりになってきてるようだし、仕込みはこれくらいでいいっしょ)
続けてアッシュがどのような心境で不安定な状態だったかに加えてそれを利用したかを語ると、二人の表情には困惑が一層深く刻まれていきくのいちは本題に入ろうと決める。そろそろいいだろうと。
「・・・そうやって単独ででも動くと決めたのは今申し上げたよう一種のワガママから来るものが主な理由ではあるのでしょうが、もう一つ主だった理由としてはアッシュの立場としては誰も信用出来なかったからというのがあると思われます・・・謡将のこと、大詠師のこと、そして預言の先にあるもの・・・それらを誰かに軽々しく明かせるものではないと」
「何・・・預言の先にあるものというと、まさか・・・第七預言の事か・・・!?」
「だ、第七預言!?ま、まさか・・・それは違うのではないのですか・・・!?」
「・・・第七預言、そしてそれが詠まれた譜石・・・これに関しては謡将の過去の記憶からの言葉ですので物証は誰の手元にも存在しませんが、謡将は確かに見たとリグレットを始めとした側近に口にしたそうです」



「・・・崩壊し行くホドの大地にて、第七譜石を見て詠み上げたと」



「「なっ!?」」
・・・そして意味深にヴァンとモースと共に預言について口にしたくのいちにまさかといったように反応した二人に、ハッキリと口にして最大限の驚きを与えた。ヴァンがホドにて第七譜石を見つけた上で中身を知ったという、まさかの言葉を口にして。









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