女忍、影に動く

「・・・何かナタリア様に関してありましたか?」
「い、いや・・・思い返してみればそちらがケセドニアでナタリアを説得してくれたからこそ、このバチカルにナタリアが素直に戻ってきたことを思い出したのだ・・・その節に関しての礼は言ってはいなかったな」
「いえ・・・現在ナタリア様はどのようにされているでしょうか?こちらの立場もあったとは言え、気分を害されてなければよろしいですが・・・」
「いや、そこについては気にする必要はない。ナタリアは現在謹慎を命じていて話を聞く限りでは不服を口にしていると言うが、そちらが言ったことは何ら間違いではなかったからこその事だからな。こちらとしてはそちらに対して抗議をするようなことはない」
「そう言っていただけると幸いです(・・・話の途中から気持ちを落ち着けたようだけど、露骨とは言わないまでもホッとしたような空気・・・こりゃ黒かな?)」
そんな反応にナタリアの事を聞くくのいちへインゴベルトは返答はするが、その中身と様子に黒という考えを抱く。ナタリアについての‘ある事実’についてを。
「・・・それより、アッシュのことについて話を戻してほしいのだが・・・」
「はい。アッシュがナタリア様を始めとしてキムラスカに心残りがあるようだとは今お話はしましたが、同様に謡将に対しての気持ちが存在してもいるからになります。ただこの謡将に対する気持ちですが、一方的にキムラスカから引き剥がしたことがアッシュの謡将への不信の一因にも繋がっています。何しろ当時のアッシュの年齢は十になったばかりでキムラスカの次期王となる人物とはいえ、まだ子どもと呼んで差し支えない年齢で親元を何の説明もなく引き剥がされればいくら信用出来る人物と認識していてもそこは親と違い血の繋がりのない他人・・・時が経つにつれて行動がどのような狙いで行われたのかに自分はそれに助けられたと頭は理解はしても、心の何処かで幼心から抱いた謡将に対する不信感が存在する事は何ら不思議ではありません」
「っ・・・た、確かに頷けますな・・・王族としての教育を施しはして気丈な性格ではあったが、それでも子どもは子ども・・・そんな時分に一方的に親元から引き剥がされれば、例えアッシュでなくとも不信感は少なからず抱いていてもおかしくはないかと・・・」
「う、うむ・・・確かにそうではあるな・・・」
インゴベルトはそんな空気を誤魔化すように話を戻すように言い、くのいちはアッシュが受けた仕打ちに一因があると語っていくと再び両者は焦りを隠すような声色で納得しあう。
(あ~、助けって言葉をさりげに入れたのはやっぱり嫌な感じだったみたいっすね~。多分二人からしてみたら本題っていうか、突かれたくない所を言わないで欲しいってのが私に対して抱いてる考えだろうし)
その様子にくのいちは揺さぶりの言葉が聞いたと感じる・・・アッシュがキムラスカに戻らないと考えた最も大きな理由になる事について、二人もまた考えているのだということを。
(とは言えまだそれを口にするにはまだ時間が早い・・・もうちょいじっくり攻めさせてもらいますよ~。まだ本題に入ったら即行で敵認定されかねない可能性があるからね~)
そんな様子に核心にはまだ行かないと、くのいちは慎重に行くことを内心で口にする。失敗する訳にはいかないという気負いからではなく、むしろ余裕から来る気持ちで。









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