女忍、影に動く

「ま、待ってくれ・・・導師の事はまだそちらの事というだけで収まるかもしれん・・・だが何故ルークについてをこちらに黙っていたのでしょうか・・・これに関しては7年前、いや事実を知ったのがいつかは知らんがその時にこちらに報せを送れば良かっただろう・・・」
「っ・・・確かにその通りだ・・・何故我々にモースやヴァンに内密の形ででもそうしなかった・・・?」
ただそれでも気を取り直しつつも鋭く何故言わなかったのかと問う公爵に、インゴベルトもまた同様にくのいちへと問い掛ける。
「・・・この件に関しましてキムラスカに情報をお伝えしなかった理由に関しましてですが、いくつか理由はございますが大きな理由を上げるならまず本物のルーク様である・・・便宜上呼び捨てにさせていただきますが、現在神託の盾であり六神将の一人でもあるアッシュがキムラスカに戻りたくないとごねるのが火を見るより明らかだったからになります」
「アッシュだと!?」
「馬鹿な・・・神託の盾、それも六神将と言うならモースもその事を知っていた事に・・・!?」
くのいちはその様子に対して大きな理由をアッシュにあると正体についても含め口にし、公爵は驚きインゴベルトは唖然としつつもモースも知っていたのかと漏らす。
「いえ、それはありません」
「何・・・どういうことだ、神託の盾ならモースの目に留まる筈だろう・・・!?」
「大詠師は基本的に神託の盾の活動内容もそうですが、どのような人物が所属しているかと言ったことになど興味は持っていません。命令を出して結果が良ければそれで良しと、神託の盾の軍部の方へ顔を見せるような事などありません・・・そしてその報告も大抵が謡将かその使いの者が報告すればそれでいいと、別段気にしたこともありません・・・そんな大詠師だからこそ謡将は無理に隠そうとするよりはアッシュとして名前と身分を用意し、あまり表舞台に立つような仕事をさせずに済ませてきたのです。信用していると言うよりは、些事を丞相共々任せている謡将なら別に問題はないと」
「まさか・・・そこまでモースが無責任だとは・・・」
「えぇ・・・ダアトに所属する奥方の前では言いにくいですが、それほどにモースが何も知らないとは思いませんでしたが・・・」
しかしすぐにそれはないと根拠を語って説明するくのいちに、二人は何とも言い難いと言った表情で顔を見合せあう。
「・・・疑われるのでしたら私が退出した後、大詠師の元に赴かれて公爵が話を聞かれてください。アッシュに会ったことがあるのかをさりげな会話に混ぜる形でです」
「・・・私が、か?」
「実はアッシュに関してですが、しばらく後に丞相と共にこのバチカルに参るようになっています」
「「何っ!?」」
「嘘ではありません。その上で何故そのような形を取るのかと言えば、もし大詠師を仰々しく呼びつけてアッシュの事を知っているかを陛下に聞かれたならあの方の事・・・不審に思う傍ら、同時に妙な疑いをかけられるのを避けるためにもあることないことを口にする可能性は十分に有り得るでしょう。そうなれば大詠師の本音と言うよりは我々の言葉を確かめることは出来ないでしょうから」
「・・・だから陛下が呼ぶのではなく、私がモースの元を訪れてそれを引き出せ、と・・・」
「はい。いかがでしょうか?・・・丞相が到着するまでにはまだ時間がありますし、我々の言葉を全てそのまま信じるのも難しいはず・・・ですからこそ確認出来る事実を一端だけでもそちらも確認されたい筈です」
「・・・陛下、よろしいですか?モースがどれだけ知っているかを確かめるためにも、私が話しに行くべきだと思いましたが・・・」
「・・・うむ、後で頼む。くれぐれもモースに不審がられることの無いようにな」
「はっ」
そんな二人にアッシュも後で来ることを口にしつつモースを探るように勧めるくのいちに、二人も確認するべきだと主従のやり取りを見せて頷きあう。









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