女忍、影に動く

「・・・どうして今になって、その事実を話しにきたのでしょうか?一連の導師についてを今聞いたが、二年前にそうなったと言った・・・何故時間を置いて、今ここにそれを話に?」
「っ・・・そう言えば、確かに・・・」
(まぁそこまでうまくはいかないっすよね~、そんなすんなりとは・・・でもこっちもそれくらいは折り込み済みってね)
公爵が口にしたのは何故今になってとの疑問でインゴベルトもハッとして時間を空けたことに気付くが、くのいちは内心の余裕を崩さずにまた口を開く。
「その件に関しましては時間が必要だったからこそになります・・・導師の事実もそうですが、この後話すある謡将の行動に関して併せて話をしなければならないと見て」
「っ、またヴァンか・・・」
「・・・何か話が続けば続くほど、モースよりヴァンの方がよりタチが悪い事をしているようなイメージが付いてくる気がするのだが・・・」
「それはあながちどころではなく、正しくその通りです」
「何・・・?」
緊迫したように話の流れをヴァンの事についてに誘導するくのいちに二人は表情を歪め、インゴベルトの言葉に正しいと頷く。
「謡将が何故フォミクリー技術という特異な技術を手にしているのかですが、そのような技術を使わずにただ持ち合わせるだけなどまず有り得ない話・・・となれば技術は用いるのが前提になりますが、ならば問題となるのは何にフォミクリー技術を用いたかになります。そこまではよろしいですか?」
「うむ・・・だが一層不安になるな・・・」
「えぇ・・・仮に導師の事が本当だとするのなら、そして今の話の流れからするなら導師の事を誤魔化すためだけと言うわけではないように思われます・・・あまりいい予感はしませんな・・・」
その上でヴァンがいかな目的を持ってフォミクリー技術を持っているかを予想させる問い掛けに、二人は揃って表情を曇らせる。決していい目的の為だと流れから感じれない事に。
「お二人の予感は合っております・・・ただこれより話す事に関して前もって申し上げさせていただきますが、嘘や大げさではないこともそうですが証拠も実際にございます。そういったことを踏まえた上でこれよりのお話を聞いていただけると幸いです」
「っ・・・分かった、そうしよう・・・では話してくれ・・・」
そしてくのいちが話をする前にまた一層念を押してきた事に余程の事なのかとインゴベルトは息を飲んだ後、覚悟を決めたように先を促す。
「では謡将がフォミクリー技術を何に用いたのか、その目的の一つの中の物ですが・・・」



「『ルーク=フォン=ファブレ』の偽物を造ってファブレに置き、本物の『ルーク=フォン=ファブレ』を自分の手元に置くためです」



「「なっ!?」」
・・・そして核とも言えるルークとアッシュの入れ換えの件をくのいちは口にし、二人は更なる驚愕を受けた。想像だにしていなかったことを聞かされて。
「やはり、驚かれましたか?」
「と、当然だ!今のルークがヴァンによって造られた偽物だと!?ならばいつ本物のルークはヴァンの元に連れていかれたと言うのだ!?」
「それは7年前、そちらがマルクトの手により連れていかれたと思われたであろうコーラル城で既に入れ換えは達成されています。7年間、記憶障害だと思われていたルーク様の行動の数々は正しく生まれたての子どもだったからこその物であり、別人であるからこそ前のルーク様の記憶など持ち合わせることが出来なかったからになります」
「っ・・・ではそちらの話が本当だと言うなら、ヴァンは行動を起こしていたということか・・・我々に対して白々しくも嘘をつきながら、本物のルークが手元にいるのを隠しつつも・・・!」
「そうなります」
「「・・・!」」
そんな二人に見たままの姿を問うように声を向けるとインゴベルトが慌てて時期についてを聞き、それに答えるとワナワナしたようになりながらの公爵の問い掛けにくのいちが平然と頷くと二人ともに苦い表情を浮かべた。話の内容を全て信じるには難しいにしても、事実なら大事どころでは済まない話の為に。









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