女忍、影に動く

「まず大詠師が何故導師に対して間蝶などというような物をつけようとしたのかですが、これに関してはお二方に信じていただくことを前提としてお話させていただきますが・・・まず、現在導師の位置につかれている今の導師は本物の導師ではありません。フォミクリー技術という生命体までもを複製出来る技術を用いて造られた、謂わば代理の導師になります」
「「なっ!?」」
そこからいきなり核心をつくようにイオンの事についてを詳しく説明するくのいちに、二人は絶句と言った様子を浮かべる。
「いきなりの事に驚かれたことでしょう・・・ですが今の導師を造るとなった理由としてまず一つに被験者の導師が二年前に亡くなったことと、そしてもう一つが謡将よりの甘言を受けて被験者の導師が死んだことを誤魔化すことにしたからなのです」
「な、何だと・・・被験者の導師イオンはもう死んでいると言うのか・・・!?」
「しかもそれがヴァンからだというのか・・・何故ヴァンがそんなことを言ったのかもだが、何でそんな技術を持っているのだ・・・!?」
そして更に被験者のイオンについてとヴァンに原因があると語るくのいちに、また二人は一層に驚くばかりか混乱に近い状態になる。あまりにも衝撃的な事実を立て続けて聞かされた為に。
「何故フォミクリー技術を謡将が持っているのかについてはまた後程に出てきますのでその時にお話いたしますが、被験者の導師の死の事実の隠蔽を行うことに決めたのはいいもののお二方も今の導師に会われたからお分かりになるかと思われますが、今の導師も十分に個人としての人格に感情などを持ち合わせております。そしてその人格などを踏まえた上で大詠師はアニスを間蝶に仕立て上げると決めたのです、自らの意に沿わせるのが常に側にいないことから難しいのなら自らの息のかかった者を側付きにして様子を知らせる役目を負わせればよいと」
「・・・そして、その結果としてアニスとやらをスパイに仕立て上げようとしたということか・・・」
「はい。ですが基本的に大詠師が望むのは自己にとって都合のよい展開であって、そのような展開になればその裏がどのようなものであるのかといった事をまず気にすることも疑うこともありません。ですので我々が影に動いて情報を改竄しようが都合のいい報告であれば気にすることなく、謡将が何故フォミクリー技術について所持していたのかに関しても、その恩恵により助かるなら別に気にするほどでもないといった考えてしかいません・・・その裏でどのようなことが行われ、自らの腹の内を深く侵食されているかなど微塵も考えることなく」
「「・・・っ!」」
それで話をイオンについてからモースが何も疑うことのないことについてを突く話に向かわせるのだが、くのいちの影を強く強調するような語りかけに二人は知らずの内に息を飲んで圧されていた。ただ事ではないと明らかに分かる様子に。
「・・・まずは導師の事実についてをお話ししましたが、よろしいですか?」
「う、うむ・・・信じられん事をいきなり聞かされたが、そちらの様子ではまだ言うべき事は残っているのであろう・・・色々聞きたいことはあるが、続きを聞かせてくれ」
「少々お待ちを、陛下」
「・・・どうした、クリムゾン?」
それで一旦大丈夫かと確認を取るくのいちにインゴベルトは動揺を残しつつも先をと促すが、公爵が神妙な様子で制止をかけたことに何をと私選を向ける。









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