女忍、影に動く

「・・・成程、丞相の奥方はそのような用でこのバチカルに来たと・・・」
「はい、そうなります」
それで公爵にも一通り先程の話内容についてを説明し終わったくのいち。
「ではクリムゾンに話も済んだところで早速だが、モースが何をしたのかについてを話してもらおう。無論ローレライ教団の意向として言えぬ部分は言えないで構わんが、出来るだけその理由については話してはほしい」
「はい、勿論です・・・まず手始めに何を大詠師が行ったのかと言えば、導師守護役のアニス・・・彼女の実の両親に到底一般の家庭では返済の出来ない額の借金をさせるように影で暗躍し、その借金の事実を元にアニスを導師のスパイに仕立て上げるという手段を用いています」
「「!?」」
それで早速出来る限り話をしてほしいと念を押すインゴベルトだったが、まずはとアニスと実の両親についての事を切り出すくのいちにクリムゾン共々驚愕してしまった。いきなりのモースの悪行を予想してない形で知らされてしまったが為に。
「ただこの件に関しましては丞相がその大詠師の影で動き、アニスを我々夫婦が引き取った上で導師との擦り合わせも行って当たり障りのない報告書を送ることで、大詠師には大したことのない情報もしくは実際に知られたならあまり望ましくない情報から、当たり障りのない情報へとすり替えられた物へと変わっていることから大詠師にはろくな情報は渡ってはいません」
「・・・ま、まさかモースがそのようなことを・・・」
「い、いや・・・確かにその事実についての驚きも大きいが、何故導師にスパイなどと・・・ローレライ教団の派閥問題については知ってはいるが、それでも導師がローレライ教団のトップであることには変わりはないはず・・・なのに・・・」
「お二人がそう思われるのは当然のこと・・・その事に関してですが、これから話すことはけして他言無用にてお願いいたします・・・これから話すことはローレライ教団の暗部の最もたる物であることもそうですが、キムラスカのお二人にとっても関係のない話ではない上に迂闊に良からぬ者に聞かれればどうなるのか分からない物になりますので・・・」
「っ・・・そこまでの話だというのか・・・」
その上で対処はしたから大丈夫と言ったように言うがやはりモースの行動は余程衝撃だったというよう顔を見合わせながら話し合う二人に、くのいちがこれから話すことが本題だと言わんばかりにトーンを落とし真剣さを強調すると公爵は圧されたようになりながらもその言葉を受け止める。
「・・・どういった内容かにせよ、まずは話を聞いてからだ。それを聞かねばこちらもどうするかの判断がつかぬのでな」
「分かりました、お話いたします・・・ただここから先の話には謡将も大いに関わってくるどころか、大詠師以上の問題行動を起こしていますので気に止めてください」
「モース以上だと・・・ヴァンは何をしたと言うのだ、一体・・・?」
「取りあえずは話を聞くのだ、クリムゾンよ・・・逸る気持ちは分かるが、何も奥方は話さんとは言ってはおらんだろう・・・」
「はっ・・・すまない、話を続けてくれ」
「はい、では改めて続きをお話いたします」
インゴベルトは一応は冷静には務めつつも話を先に促し、くのいちがまた重要な前置きをしたことにクリムゾンが不安そうに表情を変えるがインゴベルトの言葉を受け、落ち着いて先を促すとくのいちは頷く。今から話をすると。









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