女忍、影に動く

・・・それでインゴベルトが部屋の外の入口にいた兵士に公爵を呼びに行くように頼み、部屋の中に戻る。
「・・・クリムゾンは直に来るだろうが、その前にいくつか聞きたいことがある」
「何でしょうか?」
それで中のくのいちに話しかける、聞くことがあると。
「そなたが動いているということは、丞相の命令での事なのだろう。ただ丞相はモースの第一の部下であるとわしも聞いたことがあるのだが、今そなたはモースもそうだがヴァンについても資質を疑うような事をと言った・・・丞相はモースに反旗を翻すようなことをしているが、問題はないのか?」
「その点ですが、立場上丞相は大詠師の傘下ではありますが唯々諾々と大詠師の言葉を全て鵜呑みにして実践するようには活動はしていません。丞相はいずれローレライ教団までも被害をもたらさんとするような事態になることを避けるため、大詠師達の行動を止める為に動いているのですから」
「・・・モースの性格なら反旗を翻したと言われようともと言うことだろうが、それを踏まえて尚ローレライ教団までも巻き込むとはどういうことだ?」
「・・・薄々はお感じしてはおられませんか、陛下?大詠師が単なる善意のみで行動しているのではなく、自らの目論見の為にあらゆる手段を持って動いている人物だということは」
「っ!・・・それは・・・」
その問い掛けの中身はモースに敵対する意味を理解してるかといった中身でくのいちが迷いを見せずに毅然として返すと、インゴベルトは静かに慎重に投げ掛けるよう話を続けようとしたが唐突に告げられた暗にモースを信用出来るかといった中身の問い掛けを向けられて動揺を隠せずに視線を背ける。
(あ~・・・何かモースがやってそうな気配は感じたから意味深に問いかけてはみたけど、予想通りの反応が返ってきたな~。察するに何らかかキムラスカにとっての不都合な事実辺りをバラされたんだとは思うけど・・・何を持ってそうしたかって言うと、推測出来る理由はあれかな?)
その反応にモースが何かしたからこその物だと感じつつ、くのいちはその理由に関しての心当たりを思い浮かべる。
(まぁそこを突いてしまうと今の流れじゃ余計な事になりかねないし、一先ず話を戻さないとっと・・・)
「・・・不躾な質問を致しました、陛下。ですが我々はそのような行動を取りかねないか、または取るであろう大詠師達を少なからず危険視したからこそ動いているのです。そして丞相のその判断には詠師一同の同意も得られており、大詠師の件はローレライ教団の上層部の意志でもあるのです」
「詠師一同の同意も、ということは・・・丞相の独断ではないと言うことか・・・」
「はい。そもそも丞相の地位は大詠師もそうですが詠師の皆様よりも下の物であり、単独で大詠師を裁けるような地位にはありません。だからという訳ではありませんが詠師の皆様も事情を知っていただいて丞相に協力していただいています」
「ふむ・・・となれば我々がモースを引き止めるのは望ましくないという事か・・・」
そこについてを詳しく掘り下げることはせずにくのいちは話を詠師も知った上での事だと強調し、インゴベルトもその中身に引き止めれないと漏らす・・・厳密にはダアトは国という訳ではないが、他国の事情にずかずか踏み入ってしまうのはあまり望ましい事ではないとインゴベルトも王という立場上良く分かっているために。









・・・それからは公爵がすぐに来るだろうということと、インゴベルトが考え事がしたいという事で沈黙の時間になった。

そして少しして、公爵がインゴベルトの私室を訪れた。









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