女忍、影に動く

(ん~、流石に王の私室に忍び込むなんてしたら信用を得るとかそんな状態になることなんて有り得ないしね~。まぁ正攻法で行くしかないっしょ。あまり知られないようにはするけどね~)
そうやって外に出たのは改めて城の中に堂々と入るためで、くのいちは教団のローブを着つつ城門の前にいる兵士の元に向かう。
「・・・あの~、すみません。少しよろしいでしょうか?」
「・・・ローレライ教団の者か。何だ?」
「至急インゴベルト陛下に内密にお伝えしたいことがございます。中身に関しましては事が事なためにみだりにお話することは出来ませんが、火急でいて重要な物になります・・・どうか余人を交えず陛下と会談が出来るように取り次いでいただけないでしょうか?」
「・・・少々待っていろ。話をしてくる」
くのいちは城門の前の兵士に伺うように声をかけて真剣に重大な事があるから秘密で話をと願うと、兵士は少し間を空けすぐに話をしに行くと城の中へと向かう。
(ん~、この辺りはやっぱりローレライ教団の威光というか影響力っすね~。本当なら余程差し迫った状況でもないと主の元に他国の誰とも知らない輩なんて手続きやら何やらですぐに会わせるような事なんてないんだけど、それを事情がありますですっ飛ばせるんだからね~。でも本来なら有り得ちゃいけないんだけどね、こんなこと・・・私やモースみたいに良からぬ事を考える輩を無褒美な懐に迎え入れるような物なんだからね~)
その言葉通り大人しく待つ体勢に入る中、くのいちは影響力のすごさとその安易さが命取りとばかりに頭の中で気楽そうに考える。



・・・くのいちの思うよう、他国などからの使者なり来訪者を火急の用だとか内密の話だからといかにもな言葉があったとて、その言葉をすんなり受け止めて要望通りにしますとすんなり動くのは本来は有り得てはならないことである。元々の予定があることもそうだが、何らかの企み・・・分かりやすい上に最も最悪な企みを言うなら、暗殺などの状況を作りやすい事になるのだから。

故にいかに急ぎや重大な事ではあっても本来なら本当に相手側にとって一刻を争うような状況であってもある程度は待ってもらった上で、内密と言うにしても護衛の兵だったり臣下を置いたりしてもしもの事態に備えるのが常道である。信用出来ない相手なら尚更に警戒をするために。

だがローレライ教団というブランドはそんな当然あるべき警戒というものを置き去りにさせるというか、それをむしろ失礼といった風潮にするのだ。預言を詠む大元であるローレライ教団の人間なら無条件に信じることが当たり前と言うより、下手に教団を怒らせるような事をすれば預言による恩恵に預かれなくなる事も有り得る・・・と言った風に恐れられる形でだ。

・・・勿論こんな傲慢だったり立場を利用するような人間ばかりが教団にいるわけではない。ただモースに代表されるような虎の威を借る狐もまた十分存在する。まぁ地位があまり高くない上でモースの息がかかってないか教団員に関しては、孔明の調べにより大抵の者達が処罰を受けて表舞台を退場していた。立場を利用して私腹を肥やす教団員がいたという触れ込みで。

まぁ孔明の事はともかくとして、くのいちもまたそう言った教団の暗部を利用する形でインゴベルトへの内密の接触に踏み切ったのだ。まずこう言えば断るはずがないと言った考えに加え、懐に飛び入りさえすれば自分の勝ちだといいた考えがあったために。









・・・そして十数分後、戻ってきた兵士から告げられたのは自分が陛下の私室に案内するから付いてくるようにとの答えだった。









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