女忍、影に動く

・・・それでリグレットとのティアについての話も一先ず終わり、後は特に何か重要な事が起こることもなく船は数日後にはバチカルの近海にまで来た。



「ではくのいち、後は頼みます」
「はい!では行ってきま~す!」
船室の中で孔明よりの言葉を受け、その場から一瞬で姿を消すくのいち。
「・・・奥方なら余程でなければ大丈夫だとは思いますが、何か予期せぬ事が起こらねば良いのですが・・・」
「それも含めて彼女なら大丈夫だと私は信じていますし、何かが起きるとするなら大方の予想はついています。そしてその問題についてはお伝えしていますから問題はありませんよ」
「流石、です・・・丞相・・・」
くのいちがいなくなった後の場を見つつ心配そうに声を漏らすディストに信頼と対策は伝えて向けているという孔明に、アリエッタは尊敬の眼差しを向けた。









(さってとっと・・・辿り着いたのはいいけど、あまり時間をかけたくないんだよね~。かといってモースがしつこく陛下に公爵の周りをうろついてたら困るし・・・まずはモースの状況を確認してからかな。途中でこっちに接触なんか突発的にされてきたら面倒だし)
・・・それでくのいちはバチカルに着いて人の目を気にしつつ上に上がりつつ、モースの状況の確認からと考える。邪魔が入ることが面倒になると。



・・・そんな理由からバチカル城の中に忍び込んで入り、真っ先に謁見の間に向かったのだがモースの姿は確認出来なかった為にくのいちは前に来た時にいたあてがわれているだろう部屋へと向かう。



「まだか・・・まだアクゼリュスが落ちたとの連絡は入らんのか・・・!?」
(お~、いたいた。察するに進まない状況に焦れてきてるって所かな?)
・・・それで部屋に忍び込んで入ったくのいちは影から部屋をウロウロしつつモースの怒りに耐える様子を見つつ、今の状態についてを察する。まだアクゼリュス崩落の方向が来ないことに焦れていると。
(どうしようかな・・・多分あの様子だとほっといてたら陛下の方に突撃してくるとかってしないとは限らないし・・・ホントなら夜まで待ちたい所だけど・・・あっ、ちょうどいいや。今ならあれを使えば勝手に引っ掛かってくれそうかな。動き回って疲れるだろうし・・・とうっ)
その中でどう動こうかと考える中でふと机の方を見て考えが浮かんだくのいちは、気配を消したまま机に近付き胸元から包み紙を取り出し・・・置いてあったグラスの中に紙の中の粉をサラリと入れ、さっと一瞬で場から消え去る。
「・・・くそっ、喉が乾いた・・・んぐっ、ふぅ・・・・・・・・・何だ、少し眠くなってきたな・・・少し眠るか、やることもないのだから、な・・・」
そしてその後すぐにタイミングがバッチリ合ったと言わんばかりにモースがグラスに近寄りぐいっと飲み干すのだが、グラスを置いて少ししてまぶたをこすりつつベッドの方に倒れこむように体を預けた。



(とりあえずあの湯呑みの中の睡眠薬入りの水かお酒を飲んでくれればしばらくは起きないだろうけど、まぁあれ以上いても進展を待つのは面倒だから飲んでくれるように期待するしかないな~)
・・・そんな風にモースがなっていることなど露知らず、くのいちは早く飲むよう考えつつ城から出て城門前へと立っていた。









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