軍師と女忍、対峙する

だがアッシュ達はそんなことなど気にせず、自分が動けば相手も止まると考えていることであろう。相手が真っ向から自分達と向き合うか、もしくは大将だけの戦いと言ったような場になるといった考えを持って。

しかし現実がそんなに甘い見通しを許すはずもない・・・そんな風に何の策も無しに突撃したところでそういった都合のいい展開に相手がしてくれるなど到底有り得るはずもなく、自らの手の内に引き込んで叩くという手段を取るならまだよしとしても下手をすれば敵が来たと近づく余地すらもなく迎撃を受ける可能性もあるのだ。基本的に敵を懐に呼び込むのは本陣に大将と言った被害を受けてはならない物を安全に気を使っていたとしても危険に晒す行為であって、敵を食い止めるのは領地の外側に近い位置であるのが普通なのだから。

・・・この辺りはティアもリグレットの教えを受けておきながらという面もあるのだが、神託の盾の一員としてまがりなりにも兵を率いてきた経験のあるアッシュが、孔明から兵法についてを考えることはないだろうと見越されるのはあまりにもお粗末と言えた。

配下の兵士の状態に気を配り、敵の取るだろう行動を考え、最善手を用いて被害を少なくして勝利を納める・・・こんな考えは軍を率いるか、もしくは所属する者なら当然の考えだ。しかし正面衝突か面と向かって対陣することを第一とし、そこで被害が出ても目的を自分が達成さえ出来ればそれでいいと・・・後々にどうなるかなと全く考えたような素振りすらないのだから。



「・・・さて、くのいち。貴女には前に言ったようにバチカルに着く前に一働きしていただきますよ」
「ちなみにどういったようにアッシュ達には説明するんで?」
「真正面から予定にもない船・・・それもマルクトの物である船の来航をキムラスカが攻撃もせずに黙って見届けるとは思えないといって、船をバチカルから少し離れた場所に停めて陸路で向かうことを提案します。ですのでその際に先にバチカルに向かって打ち合わせしたよう、インゴベルト陛下にファブレ公爵に内密に話が出来るようにしてきてください」
「アッシュ達が私がいないことについて言及してきた場合はどう答えますか?」
「正直にお答えしますよ。ティアが共に来るとなっていたなら話は別ですが、アッシュだけなら特に問題はありませんからね」
「成程、では大丈夫そうですね」
それで次にくのいちへと改めて先にバチカルへの潜入の命を告げ、軽い問いを何回か行われるとくのいちは納得したように笑顔を浮かべる。一人で行う難関が待ち受ける任務だが、その成功で孔明の目的が一気に近付くことを意味するために。








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