軍師と女忍、対峙する

「元々貴殿方にあえて残っていただき行動してもらうことにはなってはいましたが、そもそも最初はアッシュの離反が起きるとは想定していませんでしたからね。ただそれも完全に謡将の事を割り切った上での行動を取るのでしたら良かったのですが、そのようなことなどないと言うのは今までの様子からで大方分かりましたからね。ですからこそ迂闊に謡将に望みを持たせるような事を言わないようにしました・・・あのままでしたらそれこそ釘を刺さなかったら謡将に対して夢を多分に含んだ視点のまま、真っ向から彼をアッシュとおまけにティアは問い質そうとしたでしょう。自分の知る謡将ならこんな手段は取らないと、彼らから見て卑怯な手段が待ち受けている事など考えもしない形でです」
「・・・謡将がそんな事をするはずないって、前のアリエッタなら言ってたかもしれない、です・・・でも今なら分かる、です・・・謡将がそう言った事を絶対にしないなんて、もう思えない、です」
そんな表情のままでいかにアッシュ達がヴァンに夢を見た行動を取る可能性があるかについてを話す孔明に、アリエッタは表向きの彼女を知るものなら驚愕を覚えざるを得ないような事を口にする。ヴァンの事をこんなようにハッキリ割り切れた考えが出来た事など、その性格もあって言えるはずもないとまずは見られるために。
「まぁそれでも謡将の所に自分勝手に行くって可能性はない訳じゃないけど、その時はその時でこっちが介入する口実を作るいい理由になるんだけれどね~」
「確かにその方が好都合ではあるでしょうね。特にティアがそれに引っ掛かった方が後々の為になるのは確実ではありますし・・・まぁアッシュもそうではありますが、ティアも今までの様子を見る限りでは表向きの強気さとは裏腹に案外と尻込みしやすいタイプですからね。おそらくそうはならないでしょうね」
「だよね~。まぁ私も期待してないからいいけどさ」
そんなことなど気にせず、くのいちがそれでも尚二人が馬鹿げた行動を取ってほしいとおどけたように言うと、ディストがまず無いと根拠を語ると大して気にした様子もなくうんうんと頷く。
「・・・とりあえずアッシュ達についてはここまででいいでしょう。それよりシンクにアリエッタ、ヴァンについて何か特に変わった行動とかはなかったか?」
「いや、コーラル城に来る以外に特に目立った行動は無かったよ。やっぱり自分の失態だとかリグレット達の離反だとかを馬鹿正直にモースに報告するほどヴァンも面の皮が厚い訳じゃなかっただろうし、何より自分の手でどうにか事態を動かしたいって気持ちが強いからこそ下手に誰かに勘づかれるようなことはしようとはしなかったんだろうね」
「けどその代わりに謡将がピリピリしてて、アリエッタのお友達も謡将に近付きたくないって震えてた、です。それで兵士の人達もシンクに頼んで、話をしに行って来てほしいって、何度も言われてた、です」
「成程・・・やはり我々の前で見せていたあの余裕は造られ、取り繕われていた物だったということか」
次にリグレットが話題をヴァンの変わったことについてと聞くと、二人から返ってきた中でアリエッタの言葉に納得する。ヴァンには見てくれと違い、案外と余裕がなかったのだと。










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