「・・・最悪の事態というのは、上の責任ある立場の人間は少なからず考えておかなければならない物です。無論キムラスカに限らずマルクトにダアトにでもバレた場合、謡将は貴方の力を使うことを躊躇わなかったでしょうね」
「じゃ、じゃあ・・・ヴァンにとって俺は、超振動を使う為の手駒でしか無かったとでも言うのか・・・？」
「一概にその為だけに貴方を手元に置いた訳では無いとはリグレット達からは聞いていますし、貴方自身も謡将がその為だけに動いてきた訳じゃないとは感じてはいるでしょう。ですが謡将の立場に目的を考えれば、今申し上げたような手段を選ばずに行動を起こすことは十分に有り得る事ではあったでしょう。それこそルークを操りアクゼリュスを消滅させようとしたよう、貴方の逃げ場が自分の元にしかないと強調して力を使わせていた事態は」
「・・・っ！」
孔明はそれが絶対ではないとしつつももしもの場合はそうなりかねなかった可能性が非常に高かったと強調し、アッシュは唖然とする。経緯がどうだろうと、そうヴァンが行動することも有り得たと聞いて。
「・・・とりあえずはしばらく休憩してください。そしてもし謡将と面会をしたいというのであれば、私なり妻達の誰かに声をかけてください。付き添いという形で供をしますので」
「・・・何故、付き添いなどと言う・・・？」
「貴方もそうですが、ティアに対しても言っているからです・・・もし誰も制止役がいない状況であれば謡将は甘い言葉を吐くために嘘偽りの優しさで出来た仮面を被り、真実を口にしないこともそうですが相手を謀り騙そうとする言葉を吐きかねない可能性があるのでね」
「「っ！」」
それで話をまとめるよう面会についてのルールを口にしてアッシュが必要なのかと若干弱ったように聞いてきた為、一人では危ないとティアも含めて言うと二人は揃えて息を呑んだ。そんな言葉に騙されないという自信がないと言ったように。
「では皆さん、各自部屋に戻られてください。私はシンクにアリエッタの二人から謡将達の今までについての報告をお聞きするため、妻達と共にいますので何かにつけてあれば何なりと部屋を訪れてください」
そして一先ずこの場は終わりだと締め括るように口にする孔明に、アッシュ達からは反論に質問など出てくることもなく一同は船室の方へと向かう・・・









「・・・さて、一応の釘刺しは済みましたね。これで流石にアッシュもそうですが、ティアも迂闊に謡将に接近しようとは思わないはずです」
「あれだけ言われて一人でいけるなんて流石に思わないでしょうし、それで一人で行って取り返しがつかない事態になったらどうしようって考えるでしょうからね～。特にティアは」
・・・それで船室の中の部屋の一つで、孔明は早速と成果は十分と口にしてくのいちもまた大丈夫だと太鼓判を押す。
「・・・一体何の事を話してる、ですか？」
「簡単に言うと、お父さんはアッシュとおまけにティアに楔を打ち込んだんだよ。これでもまだ謡将を信じて迂闊な行動を取るような事が無いようにってね」
「そうなん、ですか・・・」
「まぁティアとやらが今まで何をしてきたのかは詳しくは聞いてないけれど、確かにアッシュに関しては釘を刺しておかないと迂闊に飛び込みかねない考えを持っていただろうね。丞相があんな手段でいとも容易く謡将を捕らえたんだから、自分でもどうにかなるだとか後にまずい展開になったら最悪また丞相に動いてもらうだとかね」
「・・・それ・・・ダメな考え、ですよね・・・？」
「ダメもダメで大ダメな考え方だけど、アッシュは一大事になるまでそんなことになるなんて想像もしてないだろうさ。根拠のない自信を振り回す形でね・・・でもそれを止めたのが丞相って訳さ」
アリエッタがイマイチ会話を飲み込めきれてない様子にアニスが優しく補足を入れるとすぐに納得し、シンクもその会話の中に入った後に孔明へと視線を向ける。自信のこもった微笑を浮かべる孔明に。









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