軍師と女忍、対峙する

「・・・貴女が私に対して何を言いたいかは大方分かります。こんな騙し討ちのような形を取るなんておかしいだとか、ちゃんとした形で謡将達と決着をつけたかっただとか・・・そういったような事ではないですか?」
「っ・・・はい、そうです・・・」
「妻からも言われたと思いますが、別にそのような気持ちを抱く事自体は個人の自由ではあります。ですがそのような感情を優先した上でこちらが被害を受けるような事を避けたいと思ったからこそ、貴女の行動に目を光らせたのです・・・貴女の発言からもしかしたら貴女が謡将に突撃をして、止めようもなく全面戦争に発展しかねなかった為にね」
「・・・っ!」
更にその発言の真意を確認した上で行動次第で戦争になりかねなかったからこそ内心で警戒をしていたと孔明が告げると、ティアは一層表情を青くする。自分がそんなきっかけになるかもしれなかったと聞いて。
「・・・ティア=グランツ。こうして謡将が捕らえられたからこそ今こうして皆が何の被害を受けることもなく無事でいられていますが、貴女の行動で被害が起きた場合はその兵士達に対してどのような責任を取れたのですか?あぁ、戦に犠牲は付き物だという言い訳は貴女に関しては通用しませんよ。貴女の場合は何度も忠告されたように自分の気持ちを抑えることが出来ずに暴走し、私が会話の流れを変えなければ貴女は私に伺いなど立てることもなく謡将に戦いを仕掛けようとしていただろう事は目に見えています。これは私という指揮官を無視した、独断専行の軍旗違反の行動と言うには十分な行為です」
「っ!?」
「百歩譲ってシンク達の事を私が言わなかったことは差し引いたとして考えた上でも、貴女の行動はそう言った軍旗違反の上であり尚且つ個人的な感情に思考から来る物でしかありません・・・兵士達の事に関してはもしもの例え話はあくまで例え話ですので現実に起きていないことを持ち出して貴女を罰することは出来ませんが、それでも私の事など考えておらずに行動したのは事実です」
「っ、わ、私を・・・罰するんですか・・・?」
それで改めて逃げ場を無くすように例え話も用いて話を進め責任から逃げ出すことを許さないといったように話をしていく孔明に、流石にティアも自身に襲い掛かる不穏な流れから不安げにどうなるのかと問い掛ける。
「・・・本来でしたらすぐにダアトに貴女を送り、詠師の皆様に貴女の裁きを委ねたい所ですが・・・我々はこの後にバチカルに向かわねばなりませんので、その為に時間を取ることは出来ません。ですので貴女の処遇に関しては一時預けるという形にしますが、流石にバチカルでの場にも今のように貴女を連れていくことは出来ません。それが呑めないのであれば、今この場で貴女を処断することにしても構いません」
「っ!連れていくことさえ、駄目なんですか・・・!?」
「生憎ですが、今までの事を考えると貴女の事を信じることなどとても出来ません・・・そして貴女が大詠師に対して謡将の時のよう、大人しくしていてくれるはずがないとも私は思っています。その事に関して自信を持って私は大丈夫だと、もし自分が勝手に飛び出したならその後に首をはねられても悔いなどないと・・・そう誓えるのなら貴女をバチカルでの場に連れていくようにしますが、いかがですか?」
「っ!?・・・く、首をはねられても・・・なんて・・・」
しかし孔明は状況から罰しはしないとは言うが、だからと言って無条件にこれからも連れていく事などしないと言うと、ティアは顔色を青くして視線をさ迷わせる。もし衝動を耐えきれなかったらその時が自分の死になると、無理をしてでも付いていく事への天秤とかけるとあまりにも重くなるために。









.
14/23ページ
スキ