軍師と女忍、対峙する

「・・・では皆さん、謡将率いる兵士達の捕縛に取り掛かってください」
「「「「はっ!」」」」
そして孔明が動けなくなった兵士達へ羽扇を向けて捕縛を命じ、勢いよく返事を返した後に孔明達の連れてきた兵達が捕縛に取り掛かっていく。
「・・・上手くいきましたね、丞相」
「えぇ、二人のおかげです。本当にご苦労様でした、お二人とも」
「「はっ!」」
「ま、待ちやがれ!・・・まさか、貴様ら・・・最初からこうするつもりだったというのか・・・!?」
「えぇ。貴方がどこを最初と見ているかは分かりませんが、謡将の捕縛を行う際にはこのような流れにすると決めていました」
「「なっ・・・!?」」
そんな孔明に既に知っていたと言ったジェイドが近付きシンクとアリエッタも当然のように返すのだが、アッシュが信じられないといったように確認を取ってきた為に肯定を返すとティアも含めて絶句と言った様子になる。
「な、何で私達にこの事を話してくれなかったんですか・・・!?」
「敵を欺くにはまず味方から、という言葉がありますが・・・貴殿方にこの事実を話した場合、特にティアが不自然な動きをしかねない可能性を感じたからです」
「わ、私が・・・!?」
「えぇ。現に貴女は謡将に対し、説得を試みようとしました。私が謡将と対峙して話を進めている最中にです・・・これらの行動については私は貴女にそうするようにと命じた訳ではない上、謡将の言葉で私に対する疑心を一気に持ちかけました・・・これらの貴女の様子があったからこそ確信しました。もし貴女にこの事実を話していたならシンク達に不自然な視線を送るだけならまだしも、自分が謡将を説得するのだと意気込むあまりに罪が軽くなるようにするためと言ったようにするためにシンク達がいざというときに動く心積もりがある・・・だから今の内に降伏するようにしてほしい、と言ったように言い出す可能性も十分に有り得ると」
「そっ!そんな!?わ、私はそんなこと・・・」
「では貴女が謡将の言葉に容易く踊らされた事に関して、どのような釈明をしますか?あれが貴女がそんなことをしないと証明出来るような材料にはならない事に加え、謡将に対して割り切った考えを持っていなかったことのまたとない証拠だと思いますが・・・」
「そ・・・それは・・・それは・・・」
次いでティアが何故という声を裏切られたとばかりに向けてくるのだが、孔明から逆に信用出来る要素の方がないとシンク達の事をバラしかねなかった可能性も含めて指摘され、視線を反らしながら必死に言い訳を探そうとする。自分が信じられるという材料を必死に探す為に。
「・・・じゃあ俺に何も言わなかったのも、俺がヴァンに事実を言うか悟られるのを避けるためって事か・・・!」
「分かっていただけたようで何よりと言いたいのですが、厳密に言うなら貴方の場合はそれを知ってのあえての謡将への突撃を無断で行いかねなかったことにあります。おそらく貴方の場合は事実を知っていたなら横槍が入らないならと謡将に一対一の対決か、もしくはシンク達が動くのならと一も二もなく謡将に戦いを真っ先に挑むという行動に出ていた可能性が否定出来ませんでしたからね・・・他ならない自分が謡将を倒すと、そう息巻く形でです」
「っ・・・チッ、俺の事を分かったような事を言いやがって・・・!」
次にアッシュが喧嘩を売るかのような視線と共に孔明に自分に言わなかった事への怒りを向けるが、全く気にした様子もないままに事実を知っていたなら取っていただろう予測の言葉を聞いて明らかに勢いを削がれた様子で精一杯の悪態をもって返す。安全が確保出来ていたなら勝手に考えなしに飛び込んでいたと言われ・・・それが当たっていたのを誤魔化すかのように。









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