軍師と女忍、対峙する

「・・・随分と辛辣なのですな、丞相。普段の貴方を少しは知っているつもりではありますが、そのような言い方をされる方だとは思っていませんでした」
「それが嫌味や皮肉だと言うなら、身内を騙した上でけしかけるような言い方をして利用した貴方が言えることではないと思いますよ。特に舌先三寸で転がされる妹をけしかけるような貴方にはね」
「「・・・っ!」」
ヴァンはそんな様子に皮肉めいた笑みを浮かべるのだが、逆に孔明からこれでもかとばかりの毒にまみれた皮肉で返されティア共々苦々しげに息を呑む。妹はそれこそあっさり兄の口車に乗ってしまい、兄は自分がやったこととは言え愛する妹が無能だと言われたも同然であることとその原因が他ならぬ自分であった為に。
「・・・少し話がズレましたから戻させていただきますが、降伏勧告を行うことに変わりはありません。ですので謡将、降伏するか否か・・・お答えいただきたい」
「・・・フフフ、リグレット達を引き込み調べをつけているはずなのに随分呑気な事をおっしゃる・・・そのような言葉で私がはいそうですか、と頷くとお思いですか?」
「では、降伏はせずにあくまで戦うと?」
「ふっ、そう言うことです・・・!」
「「「「・・・!」」」」
それで孔明が話題を元に戻すといったように降伏についてを切り出すと、気を取り直したヴァンが余裕の笑みを浮かべ直し剣に手をかける様子に一気に場の空気が緊迫したものへと張り詰める。
「・・・やはりそう来ますか。では・・・」



‘フッ!プスッ!’



「っ!・・・ぐっ、がぁっ・・・!?」
「ぐはっ・・・!?」
「・・・えっ・・・えっ・・・!?」
・・・そんな際に孔明が羽扇を上に掲げ、いよいよ戦いが始まる・・・かと思われた瞬間、何かが空を切り裂く音が辺りに響いたすぐ後にヴァンとラルゴの二人が首元を手で押さえて苦しみの声を上げて地面に膝をつけた。
そのいきなりの二人の変貌もそうだが、そうなるに至った原因を作った人物達の姿にティアとアッシュの表情が驚愕と混乱が入り乱れた物にした。
「・・・ご苦労様でしたシンク、アリエッタ。貴殿方のおかげでこうして無事に謡将を捕縛することが出来ました」
「ありがとうございます、丞相」
・・・そう、吹き矢の筒を握りつつ平然と孔明の元に歩き労いの言葉を受けつつ敬礼を返すシンクとアリエッタの二人だ。
「おっと、動かないでね~。この二人の命は私が握ってるから、下手に動いたらもう二度と生きてる二人にお目にかかる事は出来なくなるよ~」
「「「「・・・!」」」」
そんな中でくのいちは素早く動き、倒れこんだヴァンとラルゴの二人を並べた上でクナイを首筋に当て、ヴァン配下の神託の盾の動きを牽制する。
「・・・では皆さん、謡将達の命が惜しいのであればこのまま大人しく捕縛されてください。後、逃げ出すような事をしたならアリエッタのお友達がすぐに追跡を始め例外なく喰い殺される事になりますのでご注意を」
「「「「・・・っ!」」」」
そしてだめ押しとばかりに捕縛の命令と共に追手を出せる体勢がある・・・それもアリエッタの魔物と孔明が告げたことに戸惑いを見せていた神託の盾達の動きがいよいよ止まった。助けにも入れないし逃げの一手も打てないと、そう否応なしに理解してしまったが為に。








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