軍師と女忍、対峙する

「・・・これは驚きましたよ、丞相・・・まさか貴方がここまてま来るとは・・・」
「少なからず私が関与していることくらいは感じていたはずでは?」
「ふっ、確かにそうではありますが・・・貴方がダアトを出てこのような形で対面するとは思っていませんでしたよ」
「そうですか」
・・・それで背後に多数の神託の盾にラルゴにシンクにアリエッタをつけたヴァンと対峙する形になった孔明は、余裕そうに振る舞うその姿に対していつも通りの淡々とした様子で返す。
「・・・それで、何をしに来たのですか丞相?」
「えぇ、貴殿方に降伏するようにと勧めに参りました」
「降伏・・・?」
ただここでヴァンは本題に入ると同時にいつでも斬りかからんばかりの剣呑な空気を滲ませるが、返ってきた降伏の勧めとの言葉に思わず眉を寄せる。大方自分達を制圧しに来たという考えの一点張りだったのだろう。
「貴殿方の目的に行動については調べはついています。そしてその行動に関してはとても誉められた物ではないといった程度では済まないような生温い物ではない事も・・・ですが行動の是非があるということを差し引いても、貴殿方を処分するだけに留めるのはあまりに惜しいと思いました。故に私は勧告をしに来たのです・・・降伏をするようにと」
「ふっ、成程・・・そう言うことですか・・・ですが・・・」
「お願い兄さん、丞相の言うようにして!今ならまだ間に合うわ!」
「ティア・・・」
孔明はそこから降伏について自分の考えを語っていき、ヴァンが一笑して剣を手に取ろうとした時ティアが周りを気にせず前に出て悲痛な声を上げた事に手は止まった。
「・・・フッ、甘いなティア。この期に及んで私に降伏を願うとは」
「丞相は兄さんの事を考えてそう言ってくれてるのよ!今ならまだ丞相がどうにかしてくれるから、降伏して・・・兄さん・・・!」
「・・・降伏か。丞相が何を狙いにして行動をしているのかは知らぬが、リグレットにディスト達を引き込んでいる事から察するに私と丞相の目的は相入れぬ物なのだろう・・・まだモースに預言保守派などに付き従うよりはマシかもしれないが、それでも丞相の下について活動するなど考えられぬさ」
「兄さん!」
「くどい・・・それに丞相自身も半ば私がそちらにつくことなどないと承知の上で降伏の勧告をしたのだろう。お前にあのレプリカの心をどうにか安定させてダメなら説得出来なかったから残念だった・・・と言った具合にして、自分が悪者にならないようにするためにな」
「っ!・・・そう、なんですか・・・丞相・・・!?」
それですぐに兄として余裕を浮かべた様子で話を進めるヴァンは次第に会話の流れを制していき、ティアはその狙いの予想を聞き孔明を信じられないといった様子で視線を向ける。
「・・・何を思って私にそのような視線を向けているのかは敢えてお聞きしませんが、少なくとも貴女の為になどと考えて降伏勧告などしませんよ。そして彼は少なくとも貴女よりは覚悟は出来ています。降伏勧告をするから私に恨みを持たないようになどと言わなくても大丈夫な程に」
「っ!」
「・・・それでも尚何故と思うのでしたら答えをお聞かせしますが、降伏を勧めると言うことは相手側に対する一種の情けでもありますがそれ以上に戦だけで全て解決しようというならその分の兵の被害に行軍の際にかかる資金も馬鹿になりません。ですから犠牲を覚悟で相手を全て滅ぼす気がないのなら、降伏勧告は戦において状況を有利かもしくは終結に繋げる常套手段の一つ・・・少なくとも私は貴女の為にと降伏勧告をすると決めたわけではありませんし、貴女の機嫌を伺い媚びるような案を出したと言うように思われるのはハッキリ言って心外です。それも敵であると散々貴女自身が口にして来た相手の言葉をまんまと真に受けるような人物からなど尚更にです」
「っ・・・!」
だが孔明がそんなつもりなど微塵もないと断言するばかりか、冷たい視線まで伴わせて冷淡に告げたことにティアは思わず身震いした。孔明のことを見誤ったばかりか、ヴァンの言葉を受けてそれをまんまと信じたと言われてしまい。









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