軍師と女忍、対峙する

「でもよ・・・俺としてはまだ信じたくないって気持ちがあるのは確かなんだよ、師匠が俺の事を使い捨てるつもりだったってのは。ただそれは信じたくないって気持ちなだけであって、もうそれを否定する事はない・・・なのにどうしてあいつはあそこまで師匠もそうだし、モースにユリアシティの奴らを信じるっていうか疑うような事を考えられないんだ・・・?」
「その答えは様々あると言えますが、その理由の大きくを占めているのは・・・彼女が決定的な意味で今言った方々に否定をされてないからですよ」
「決定的な、否定・・・?」
そんな空気の中でルークが何故ティアの理解力はあそこまで無いのかと言ったような声を漏らしたことに、孔明は返す。決定的な否定がないからと。
「貴方にとって残酷な事と承知で言わせていただくなら、貴方は謡将に完全に見捨てられたという事実があるからこそ事実を事実として受け入れれたのだと思いますが・・・彼女にはそれがないんですよ。自分の存在そのものを否定された事が」
「存在の否定・・・」
「そういった経験がないからこそ彼女の中で、未だに謡将達の事を聞いてもそんなことはないと思いたいんです。自分が尊敬して敬愛しているそんな存在が、自分の理想とかけ離れたような事をするはずがない・・・と言ったように」
「・・・何だそれ・・・」
「・・・呆然とするお気持ちは分かります。と言うよりは貴方に対する謡将の行動に真意を見たはずなのに、未だに自分がそういった扱いを受けていないから肉親への情であったり、敬愛の念などを第一にしていることが問題なのです。何も全て今までの思い出を捨て去るようにとまでは言いはしませんが、そういったような考えに未だに至れていない・・・いえ、自分では至れているつもりになっているのが最も厄介です」
「至れているつもりで厄介って・・・」
「彼女は自分が冷静でいれているつもりでいるんです。勿論本人に言えば否定を返されるとは思いますが、それもあくまで自分がそうだと認めたくないという一心から来るものであり、とても私心がない客観視された物の見方から来るものではありません。そしてそんな公私混同をしている人物を説得もしくは改心を目指すというのは、まず言葉だけでは無理です」
「お前がそこまで断言するって・・・それだけティアが厄介って事なのか・・・」
それでティアがいかに本当の意味で衝撃的な事実を受けていないかに言葉での説得がまず無理だと断じる孔明に、ルークは相当に厄介なのだと感じる。そのティアの頑迷さを。
「確かにそうではありますが、だからこそ彼女に期待というか謡将達を相手にして動揺しないようにであったり、ましてや戦力として期待するようなことはしないようにしてください・・・まず謡将に会えば自分の言いたいことを我慢することなどせず、聞きたいことを聞くために動くでしょうからね」
「まぁそうなるだろうってのは想像はつくけど・・・今の話だと師匠達に会っても、何て言うか特に変わりそうにねぇ気がするな・・・むしろ師匠達をどうにか出来たら、変な方向にはっちゃけるって言うかあいつの感じだと自分がモース達の代わりに頑張るんだ・・・とか言いそうな気がするんだけど、どうなんだ?」
「・・・そんな展開かそれに近しい状態には絶対にしないようにしますよ。彼女を上の立場に上げるような事など、あってはならないことと言えますからね」
「そ、そこまで断言するのか・・・」
孔明はルークに対してこれから頼ることのないように言うのだが、反対にティアがやる気を出した場合について聞かれた際に常にない淡々としながらも温度が一段下がったような声での返しに、ルークは思わず引いてしまう。そこまで孔明にとってティアは引き入れたくない相手なのかと。









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