軍師と女忍、対峙する

「前者はともかく後者についてを違うと否定を返せない様子から見るに、貴女自身も少なからず感じたのでしょう。市長が悩み苦しみもがきながら預言を達成させる為に動いていると言ったような光景を、一端でも見たことがないからそう否定出来ないと」
「・・・はい、その通りです・・・」
孔明がその姿に否定を返せない理由を推察すると、ティアは極めて遺憾そうにしながらも頷く。それこそ記憶の底まで全て漁り、預言を達成させる事に僅かでも苦しみといった感情を見たことなどないばかりかむしろその逆・・・誇りや喜びと言った感情しか見たことがないのだろう。ティアの記憶の中にある市長の姿に言葉は。
「・・・つまりはそういうことです。預言は達成されるべきとそこに異論に感情を挟む余地などなく、他者の犠牲をその為の階であり必要な物と思うだけの人物だからこそ言葉だけの説得は難しい上、自分達の考えと同じと言わずとも近いと思えるような物でなければそれを他者に明かすことをしない・・・という事になるんですよ」
「だから・・・私は、その考えに近くないから、お祖父様に何も言われなかったと・・・?」
「えぇ、その通り・・・現に貴女の兄である謡将は預言の事実を知らされた上で行動しているのです。と言っても、謡将はあえて市長達の信頼を勝ち取った上で、裏でその信頼の影に隠れて暗躍しているようですけれどね」
「そんな・・・なんで兄さんもお祖父様達も、そんなことを・・・」
その上で市長達の考え方及びヴァンのやり方についてを話す孔明に、ティアは動揺覚めやらぬままに信じられないといった言葉ばかりを口にしていく。
「・・・すみませんが大佐、ここで話は一端終わらせましょう。最低限一通りこちらについては話終えましたので、また後で詳細についてお話する形で」
「・・・えぇ、そうですね。分かりました、また何かありましたらお呼びしますので、それまでは各自休息という形にしましょうか」
「っ・・・」
孔明はそこでティアから視線をジェイドに移して話を止める事を提案し、その申し出をすんなりジェイドが受けるとティアはホッとしたような息を吐く。だがそんなティアは、その二人の会話の中に仕方無いといったニュアンスが盛大に滲んでいるとは微塵も感じていなかった。



・・・それで休息となり場は解散となったが、場にはティアとアッシュのみが退散しただけで他のメンバー全員がそこに残っていた。
「・・・改めて聞きたいのですが、いいのですか?彼女をこのまま連れていっても」
「おっしゃりたいことは分かります・・・ですが今船をどこかに止めて降ろすなど時間の問題もあって出来ませんが、何より彼女は頑として聞き入れないでしょう。自分は大丈夫だから連れていってほしいと」
「・・・兄が預言の事を知った上でそれを欺くように行動していることを踏まえた上で、兄のやったことをすっぽりと頭の中から無くしているような状態の彼女の姿を見てでもですか?」
「・・・それはもう彼女の自己責任以外の何物でもありませんし、彼女が我々を丸ごと謡将に身柄を全て引き渡すといった手を取らない限りは大丈夫ですので心配なさらないでください」
「なら彼女に貴殿方にお任せしますよ」
それで早速とばかりにティアの体たらくを口にするジェイドに孔明は大丈夫と言うように返すのだが、その場にいた面々からは意外といったような表情を浮かべている者は誰もいない。ルークもフリングスも含めてである・・・やはり余程ティアの様子は周りの目から見ても酷いと思えるものであったようだ。









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