軍師、後始末をする
「・・・話を戻しますが、特に反対意見がないのでしたら私が謡将の元に向かいますがよろしいでしょうか?」
「・・・はい、今の状況ではそれが最上でしょう。ですが謡将がどのような道程でルーク殿を探しに行くのか分かるのですか?」
「バチカルからマルクト方面に飛んだなら、まずケセドニアに船で向かうことが必要になります。そこでキムラスカ側の領事館に向かいどの方面に向かうかとの話し合いといったことはされるでしょう。キムラスカ側に色々納得させるためにも」
「成程、まずはケセドニアに向かうということですか」
「そうなりますが、私が公的にというか派手に振る舞う事をすれば謡将やティア=グランツに我々の狙いが悟られるかもしれません。ですので兵こそティア=グランツの捕縛の為に私の配下の者を10名程連れてはいきますが、謡将には連絡が行かないように向かいたいと思います。そして出来ることならルーク殿とティア=グランツの二人か片方どちらかでも見つかるか、両方が見つからないと断定した時か死亡が明らかとなった時に姿を見せようとも思っています」
「ふむ・・・二人とも生きているか、ティア=グランツだけが生きて帰った場合はその場で拘束するというわけですか」
「場所や状況にもよりますが、そうすることになるでしょう」
孔明は自身が行くことについてを改めて強調してトリトハイムがどうやって追い付くのかという疑問から、ティアの捕縛について併せて説明する。
「そしてその後に関してですが、ティア=グランツを捕縛した場合に関してはバチカルに向かうように進路を取ります。彼女がこの事件の大元ですから、導師や大詠師がいない今となってはダアトがティア=グランツの行動と関係無いと示すには私が直々に送り届けるべきだと思いますので」
「成程、確かにそういった処置は必要になるでしょうが・・・そうでなかった場合はどうされるのでしょうか?」
「ルーク殿が生きていた場合はケセドニアまで護衛として行動を共にしてからダアトに戻り、そうでなければ余程何かがない限りは最優先でダアトに戻ります。ティア=グランツがいないとなれば特に後者の場合の対応を急いでしなければならないので、あまり時間をかけるわけにもいきません」
「うっ・・・出来ることなら、ルーク殿だけでも生きていて欲しいですね・・・そう考えると・・・」
「・・・えぇ、私もそう思います。心から、ね」
そしてその後の対応に関してを述べる孔明に詠師陣は揃って苦い顔を浮かべ、孔明自身も口元を羽扇で隠しながら疲れたように同意する。
「・・・とりあえず私はこの後すぐに準備に取り掛かりますので、後の事はお願いします皆さん」
「はい、ではよろしくお願いします丞相」
それでも気を取り直し出発の為に頭を下げる孔明に、詠師陣もまた揃って頭を下げる。
・・・それで自らの執務室に戻り配下の兵10名にすぐに来るようにと近くにいた兵士を呼んで伝言を頼んだ孔明は、誰もいなくなった部屋でシワを眉間にくっきりと浮かべていた。
「・・・計算外もいいところです。このような事をまさか起こすような者がいるとは・・・場所も到底暗殺などには向かない場所と言える所ですし、本当にティア=グランツは何を考えてキムラスカのファブレ邸に行ったのでしょうか・・・魏延でもここまで考えなしの行動は取りませんでしたよ・・・」
・・・いかに比類なき頭の良さを誇る孔明とて、予測出来ない物はある。と言うよりは頭がいいからこそ分からないのだが、それは理屈的どころか感情的に見ても理にそぐわない行動を取る人間だ。
魏延という特定名を出しながら心底から意味が分からないと声を漏らす孔明だが、すぐに表情を普段通りに戻す。
「ですがこれは考えようによれば好機となり得るかもしれません・・・現地に行かねばまだどうするかを決めようもありませんが、謡将の妹で大詠師の配下という立場を持つティア=グランツ・・・上手くいかせれば二人の地位に信頼を崩す、いいきっかけになりそうです」
転んでもただで起きないばかりか、リカバーすら容易くしてのけるのが孔明の頭脳・・・その策謀が今、彼の頭の中で生まれつつあった・・・
next story
.
「・・・はい、今の状況ではそれが最上でしょう。ですが謡将がどのような道程でルーク殿を探しに行くのか分かるのですか?」
「バチカルからマルクト方面に飛んだなら、まずケセドニアに船で向かうことが必要になります。そこでキムラスカ側の領事館に向かいどの方面に向かうかとの話し合いといったことはされるでしょう。キムラスカ側に色々納得させるためにも」
「成程、まずはケセドニアに向かうということですか」
「そうなりますが、私が公的にというか派手に振る舞う事をすれば謡将やティア=グランツに我々の狙いが悟られるかもしれません。ですので兵こそティア=グランツの捕縛の為に私の配下の者を10名程連れてはいきますが、謡将には連絡が行かないように向かいたいと思います。そして出来ることならルーク殿とティア=グランツの二人か片方どちらかでも見つかるか、両方が見つからないと断定した時か死亡が明らかとなった時に姿を見せようとも思っています」
「ふむ・・・二人とも生きているか、ティア=グランツだけが生きて帰った場合はその場で拘束するというわけですか」
「場所や状況にもよりますが、そうすることになるでしょう」
孔明は自身が行くことについてを改めて強調してトリトハイムがどうやって追い付くのかという疑問から、ティアの捕縛について併せて説明する。
「そしてその後に関してですが、ティア=グランツを捕縛した場合に関してはバチカルに向かうように進路を取ります。彼女がこの事件の大元ですから、導師や大詠師がいない今となってはダアトがティア=グランツの行動と関係無いと示すには私が直々に送り届けるべきだと思いますので」
「成程、確かにそういった処置は必要になるでしょうが・・・そうでなかった場合はどうされるのでしょうか?」
「ルーク殿が生きていた場合はケセドニアまで護衛として行動を共にしてからダアトに戻り、そうでなければ余程何かがない限りは最優先でダアトに戻ります。ティア=グランツがいないとなれば特に後者の場合の対応を急いでしなければならないので、あまり時間をかけるわけにもいきません」
「うっ・・・出来ることなら、ルーク殿だけでも生きていて欲しいですね・・・そう考えると・・・」
「・・・えぇ、私もそう思います。心から、ね」
そしてその後の対応に関してを述べる孔明に詠師陣は揃って苦い顔を浮かべ、孔明自身も口元を羽扇で隠しながら疲れたように同意する。
「・・・とりあえず私はこの後すぐに準備に取り掛かりますので、後の事はお願いします皆さん」
「はい、ではよろしくお願いします丞相」
それでも気を取り直し出発の為に頭を下げる孔明に、詠師陣もまた揃って頭を下げる。
・・・それで自らの執務室に戻り配下の兵10名にすぐに来るようにと近くにいた兵士を呼んで伝言を頼んだ孔明は、誰もいなくなった部屋でシワを眉間にくっきりと浮かべていた。
「・・・計算外もいいところです。このような事をまさか起こすような者がいるとは・・・場所も到底暗殺などには向かない場所と言える所ですし、本当にティア=グランツは何を考えてキムラスカのファブレ邸に行ったのでしょうか・・・魏延でもここまで考えなしの行動は取りませんでしたよ・・・」
・・・いかに比類なき頭の良さを誇る孔明とて、予測出来ない物はある。と言うよりは頭がいいからこそ分からないのだが、それは理屈的どころか感情的に見ても理にそぐわない行動を取る人間だ。
魏延という特定名を出しながら心底から意味が分からないと声を漏らす孔明だが、すぐに表情を普段通りに戻す。
「ですがこれは考えようによれば好機となり得るかもしれません・・・現地に行かねばまだどうするかを決めようもありませんが、謡将の妹で大詠師の配下という立場を持つティア=グランツ・・・上手くいかせれば二人の地位に信頼を崩す、いいきっかけになりそうです」
転んでもただで起きないばかりか、リカバーすら容易くしてのけるのが孔明の頭脳・・・その策謀が今、彼の頭の中で生まれつつあった・・・
next story
.