軍師と女忍、合流する

「ねぇ、ティア?家族が酷いことをしていて、それを止めたい・・・そう思うことは別にいいよ?でもね、それは絶対に貴女が謡将達を止めなきゃいけない理由にはならないんだよ?」
「え・・・?」
「私達も謡将や大詠師達を止めたいとは思ってはいるけど、こういう言い方は気にいらない人もいるだろうけど問題を解決さえしてくれれば旦那様も私も別に文句もないし反論もないんだ。私達は別に是非自分達の手で何がなんでも二人を止めたいだとか思ってはいないからね・・・それで私がティアに何を言いたいのかって言うと、個人の感情が告げる考えなんて責任問題なんかと結び付かないってことを言いたいんだよ。少なくともティアには謡将に対しての責任があるんじゃなく、単にティアがこうしたいっていう自己満足の域を出ない行為だってね」
「っ!?」
責任じゃなく自己満足・・・くのいちから告げられた自身の行動がどう見られているかの発言に、ティアは驚愕に目を見開いた。そんな風に自分の考えが評されるとは微塵も思っていなかったといった様子で。
「ティアがそうしたいって気持ち自体は否定はしない・・・けれどそれを義務だとか自分がやらなきゃならないことだって自分に言い聞かせるのは違うんだよ。それも迷いながらでも、家族や敬愛する人を自分が辛くてもやらなきゃいけないなんて風にするのはね」
「で、ですが・・・」
「その上で聞くけど、もし貴女が家族を悩みながらも殺そうとする子どもを見たとしたら・・・貴女はその子どもに家族を殺せばいいと何の躊躇いもなくそうすればいいし、それが正しいことだって誰にもはばかることなく言える?その子どもがもし返り討ちなりにあう可能性も考えてさ」
「そっ、それは!・・・もしかして、私の事を暗に指しているんですか・・・!?」
それで優しい口調ながら話を進めるくのいちだが、例えとして出した中身にティアはまさかと声を上げる。子どもは自分として例えて出しているのかと。
「そうだとしても、そうでないにしても答えてくれる?今の質問に関してさ」
「・・・っ!」
しかし関係無いと質問に答えることを求めるくのいちにティアは息を詰まらせる・・・殺すことを薦めるのは自分が出した結論ではあるが問いの答えとしては人でなしの烙印を押されかねなく、かといって薦めないと言えばならティアにも当てはまることだろうと言われかねない・・・どちらを選んでも不本意な印象を抱かれかねないとティアは感じているために。



(・・・酷いな・・・見通しがあまりにも甘すぎる・・・これが話に聞くヴァンの妹だというのか・・・)
そんな光景を見ていたピオニーだが内心では盛大に呆れ、表面上ではもう隠しもせずに冷ややかな目でティアを見ていた。誰かに見られていると言う風に気遣い、取り繕うことすらなく。
(これならまだ思想に行動こそ問題ではあるが、まだ兄のヴァンの方が何倍もマシだろうな・・・ティアは毅然としてるんじゃない。毅然としたいというよう振る舞っているだけの子どもだ・・・奥方の言い方は明らかに子どもに向けて言っているような噛み砕いた物なのに、それでようやく自分が今どんな状況であり覚悟が定まってないかを自覚させられている・・・こんなヤツを連れていきたくないという気持ちは十分に分かる。何せ冗談だとか大袈裟抜きにヴァンやモースを相手にしたら、言葉次第じゃ揺れて使い物にならんどころか本当に寝返ることも有り得るだろうからな・・・ならばまだ敵のヴァンの方が詰めの甘さこそあるが、色々と割り切ってるだろう)
そして内心で更にティアに対する考えを深めると共に、ヴァンの方がマシとハッキリ内心で思う・・・ティアがうまく言葉を紡ぐ事の出来ないその様子を見ながら。









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