軍師、後始末をする

「これは謡将に大詠師辺りで情報を止められているので皆様も知られている方はいないでしょうが、ティア=グランツは以前にも謡将を襲い刺したという前歴が二年程前にもあります」
「なっ!?何故そのような事が!?それに何故丞相がその事実を知っているのですか!?」
「二年前、兵士としては新米もいいところだったティア=グランツが大詠師の配下としてカンタビレ殿の推薦により配属されるという普通では有り得ない事態が発生しました。現在カンタビレ殿は大詠師の命により遠方に行っていますが、彼女と大詠師の関係はこの場だからこそ申し上げさせていただくならとても良好な物ではなかった・・・そこから私は色々と調べていき、ティア=グランツが謡将を刺した事実に辿り着いたのです」
「「「「・・・」」」」
(調べた、と言うよりはリグレットに聞いた物なんですがね。ただ彼女は教え子のまさかの暴挙に嘆いていましたが・・・今回の事実を聞けば、また一層嘆くことでしょうね・・・)
孔明はその事実を知った流れに関してを事細かに説明していき詠師達は唖然とした様子を浮かべるが、内心では実は違うのだとリグレットの事について考えていた。



・・・実際、孔明がティアの配置に疑問を持ったというまでは本当だ。モースの配下は基本的にエリートと言うよりは、預言保守派かどうかに使えるかという期間を置いて人物を見定めた上で配置される。下手な人間を置いては預言の邪魔になりかねないというモースの考えの為に。そんな兵士ばかりの所にまだ新米同然の経験のないティアを配属させようとするなど、不自然極まりない。

故に気になった孔明は経緯についてを調べようとヴァンの妹ということもありリグレットに事情を聞こうとしたのだが、そこで答えを聞いたのだ。ティアがヴァンを刺した、と。

驚きながらも更に訳を聞いていけばヴァンの計画についてを聞いたらしいティアがヴァンを止めようとして刺したとのことだが、ヴァンはティアを殺すことどころか攻撃すらすることなく場を終わらせたとのことだった。

それで後の流れはしばらくの謹慎の後に詠師陣に言ったような流れになるのだが、リグレットはそういったティアの行動についてを孔明の前で嘆いていた。ヴァンの妹とは言えティアはヴァンと違い計画を知らぬ身の上もあるが、そのヴァンから兵士としての教育を教官として任せられた身。それが半ば自らから遠ざけるための厄介払いとも取れるような状態で始まった関係だとしてもだ。

最初こそは不満しか見せなかったティアが徐々に自身に信頼を向けて言うことを聞いてくれてきたことにリグレットも教官という立場から嬉しさを感じていったが、ヴァンを襲うという行動は一つ間違えれば自身の命を失っていたという考えなしの勢い任せの物であった事から自身の教えはなんだったのかと嘆いたのだ。そしてそんなリグレットが色々と問題がありすぎるファブレ邸襲撃の事件の顛末を知ったなら、以前以上の落胆を生むだろう・・・孔明はそう考えていた。



「・・・色々衝撃的な事が多すぎて何からどう言えばいいのか、正直わかりませんね・・・これは」
「えぇ、私が皆さんの立場でしたらそうなるのは当然だと思いますからこのまま私が話を進めさせていただきますが・・・今言ったように謡将は妹に刺されたというのに罰することも何もせずに終わらせました。そしてそんな謡将だからこそ、妹という存在をまた守る為に行動しかねません。二度あることは三度ある、と言いますからね」
「しかし、そんなことが許されるはずないと思うのですが・・・」
「はい。ルーク殿がティア=グランツと二人共に死亡したというのも問題ではありますが、二人共に生存もしくはティア=グランツだけが生き延びていた場合・・・謡将がそういった行動を取ってしまえばキムラスカは勿論のこと、ダアトへの背任行為にもなります。私情を持って国を越えた一大事を隠蔽しようというのですから」
「「「「っ・・・」」」」
それで気を何とか持ち直したトリトハイムからの言葉に孔明はヴァンが取る可能性のある最悪な可能性・・・ティアを独断で助けた場合についての危険性について語り、詠師陣の息を一斉に飲ませた。その行動の結果がいかなものを生むか、少なからず予想が各々ついてしまったために。









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