女忍、主の命を遂行する

「・・・おいディスト。時期からしてお前は丞相の傘下としてその前後に加わった訳ではないのだろう。それなのに導師のレプリカを造るとそう決断したのはどういう理由があってだ?」
「表向きまだ謡将を裏切ってないしフォミクリー技術の研究を続けているという状況の中で、その要求を拒否した場合に私がどうなるかわからなかったからです。それに拒否をするにしても二人を同時に納得させるだけのいい理由が丞相でも思い付かなかったのです・・・導師が死んだのならそのままそうなったと皆に伝えるように言えばいいと言った所で100歩譲って大詠師はまだ納得したとしても、謡将はフォミクリー技術を大詠師に暗に認めてもらうというためにも、慎重に事を進めるべきと言った私の言葉を取り上げてくれるとはまず思えませんでしたから・・・」
「成程・・・拒否しようにも拒否出来ん状況にあったから、やむ無く導師を産み出す事にしたのか」
「それもありますが・・・謡将からして最も重要だったのは、ダアト式譜術を使える存在がいてもらわねば困るからという点にあります」
「ダアト式譜術、だと?」
次にピオニーがディストにイオンを造ることを拒否出来なかったのかを問うと、その答えを滔々と語っていく中でダアト式譜術という単語に引っ掛かりを浮かべる。
「簡単に言うなら導師の血脈以外には使えない特殊な譜術ですが、奥方が先に言ったよう被験者の導師が亡くなった事によりその譜術を使える者は本来であるならもういない筈でした。ですがフォミクリー技術を用いてこちらの導師を産み出すようにしたことで、ダアト式譜術の使い手を謡将は復活させたも同義なんです」
「待て。ダアト式譜術が導師の血脈にしか使えない特殊な譜術なのはいいだろう・・・だが何故ヴァンはそこまでしてダアト式譜術にこだわったんだ?そうするだけの理由があるから導師を是が非でも再びその位置に据えたいと思ったんだろう?」
「はい。その理由に関してですが、陛下もセフィロトという場についてジェイドから報告を受けているかと思います。そのセフィロトですが本来でしたら中に入って施設を起動させる為には3つの封印が施されているのですが、その内の1つは今は意味を為していないので置いておきます。肝心なのは残りの2つの封印の内の1つが、ダアト式譜術を用いねば解けない封印なのです」
「何・・・そんな封印があるのか?」
「はい。おそらくはセフィロトへとまかり間違って何も知らない者や良からぬ企みを持つ者が入り込むばかりか、何か事故なり故意なりでセフィロトを機能不全に陥れられるような事態になることを警戒して封印を施したのだと思われます。ただその封印を施したのはダアトにアルバートにユリアと封印の呼び名の頭に付くことから、その封印を施したのは誰なのかはおおよその予想は陛下にもつくでしょうし、いかに重要視されていたかは想像に難くない筈です」
「まぁな・・・創世歴時代から換算してもオールドラントで十指に入る有名でいて、重要な偉人達の名前がズラリと並んでいるんだ。それだけ重要であることは容易に想像出来るし、その封印を解くためにダアト式譜術を使うしかないと言うならヴァンが導師を産み出すことにこだわったことも納得は出来るな」
それでダアト式譜術の説明をしつつ他にもセフィロトにかけられている封印とその名称についてを説明するディストに、ピオニーも封印の重大性について納得する。偉人達が名を連ねている事がどれだけの物なのか、その上でその封印がいかに頑強なのかを少なからず感じて。










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