軍師、後始末をする

「・・・私としてもそのような事態を起こされるとは全く想像していませんでした。ですがこれらは事実、それも謡将の身内で神託の盾というその身分を被害者が認める形で起こしてしまった事実です・・・残念ながらこの事実は認める以外にありません、皆さん」
「「「「っ・・・!」」」」
孔明はそこで珍しく心底から疲れたようにしながらも事実は事実と言い切り、詠師陣も苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
「現在バチカルには偶然か必然か、大詠師が向かっています。ですがまだ大詠師はティア=グランツが起こした事件については何も知らない形でバチカルに到着するでしょう。ダアトを出た日付からバチカルに着くまでを計算して遅くとも明日までには着くくらいの時間ですからね・・・おそらくバチカルの城に着いたなら大詠師は責任についてを問われるでしょうが、目下重要なのはそこではありません。重要なのは・・・ルーク殿の身の安否、その一点に尽きます」
「・・・やはり、そうなりますか」
「えぇ。おそらく大詠師はバチカルで平謝りし続ける事になるでしょうが、いくら謝った所でルーク殿が無事でないと分かればいかに親密な関係を築けているキムラスカとは言え温厚な対応の期待は出来ません。まだ五体満足な状態でルーク殿がキムラスカ圏内に戻れば順調だった関係に軋轢は生みはしても国交の回復は見込めますが、元々疑似超振動は起きればどういう結果になるか見当がつきにくい上に危険が伴われる現象・・・ルーク殿が疑似超振動で亡くなった可能性も否定は出来ませんが、もしそうでなくとも疑似超振動で飛んだ先はマルクト方面の街も村も近くにはない場所。魔物や盗賊に襲われる、道に迷う、空腹に倒れる、誤ってマルクトに向かう・・・挙げればキリがありません。ルーク殿の命がなくなる危険の数は」
「・・・ちなみにお聞きするが、ティア=グランツが無事な上でルーク殿の身を守りキムラスカに送り届けようとする可能性は丞相から見てあると思われますか?」
「・・・無いとは言えませんが、そもそも兄を他国・・・それも王族に連なる貴族の家で襲撃しようとする人物。二人共に無事とはまだ分かってはいませんが、無事だとしてもルーク殿を守る義務があると考えるとはまず思えません。むしろ譜歌を歌って強引にファブレに侵入したことから、キムラスカやファブレに対しての害意を持っている可能性すら有り得ます。その目的次第では自分の正体や行方を隠そうと、ルーク殿の命を奪う事も・・・ハッキリ言ってしまえば期待するのは酷と言えます。そのような危険人物にルーク殿の安全を託すことは」
「「「「っ!」」」」
続けて孔明はキムラスカとの関係についてからルークの安否が重要かを語り、最もな不安要素がティアにあると言い切ると詠師達は一斉に下を向く・・・ティアという人物が取った行動があまりにも常識と照らし合わせて見て常軌を逸している為、ルークを守ることの方が有り得ないと思ったが故に。
「ただ、それでもルーク殿の生存の可能性についてを放棄する訳にはいきません。ルーク殿が亡くなったか生きているかでダアトの責任というものの大きさが変わってきます。キムラスカにとっては心地好くない物でしょうが出来るだけこちらの被害を抑えるためにも・・・そしてルーク殿の生存を望むのはキムラスカ側からしても当然です。そういうことを理解してか、謡将は自身でルーク殿の捜索に行くと導師の捜索から急遽予定を変更してマルクトに向かったと手紙に書いてありました」
「謡将が?」
「はい・・・話によればファブレは譜歌による効果で被害を受けていた事に加え、大事にしないようにと少人数で捜索に向かう事になって謡将が立候補したと書いてあります。それでルーク殿の護衛兼使用人と共に向かったそうです」
「・・・そうですか・・・状況から見て謡将の判断は間違ってはいないでしょうが、大事にしないためにも大人数を割けないというのはやはり些か不安が・・・」
「えぇ、その点に関しては不安だというのは否めません。それに謡将について一つ懸念があります・・・それは謡将がティア=グランツを逃がすのではないかという物です」
「!?・・・謡将が、ティア=グランツを逃がす・・・何故、そのようなことを・・・!?」
孔明はそれでもルークの生存についてを諦める訳にはいかないと言った上で今までの流れから全く変わるようにヴァンがティアを逃がす可能性があると言い、トリトハイムは訳が分からないと心底から孔明にどういうことかと疑問を向ける。












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