女忍、前進する

「・・・さて、良く戻ってきたジェイド。そして・・・そちらのご婦人がダアトの丞相の奥方か?」
「はっ、初めてお目にかかりますピオニー陛下」
「頭を上げてくれ、奥方。こちらは随分貴殿方に助けられた身だ。そのような存在に頭を下げさせるのはこちらも忍びない」
「ありがとうございます、では・・・」
・・・それで謁見の間に入り、奥の玉座に座っていた人物のピオニーの前にくのいち達は来た。ガチガチに着飾るのが通常の王の服装の筈だが、ラフな格好のその姿は皇帝と言った様相とは言いにくい物がある。
だがそんな姿とは裏腹に皇帝らしくくのいち達に応対するピオニーの姿には、確かな威厳がありくのいち達に頭を上げるように告げる。
「まずは礼を言わせてもらおう・・・そちらの行動のおかげでアクゼリュスの住民は無事に救われた、済まなかった」
「いえ。元はと言えばダアトの人間が預言の中身を公にしないばかりか、マルクトを預言達成の為の生け贄とまでしようとしたことにあります。本来でしたらこちらが謝罪せねばならない立場です」
「いや、それも元はと言えば丞相がいなければこのような形で事が露見する事もなく、今頃アクゼリュスは魔界に墜ちて右往左往している時にキムラスカからの宣戦布告を受けていたやもしれん。そう考えればそちらが動き、それらを止めてくれたことはこちらにとっても本当に助けられることとなった。この場に丞相がいたなら何度でも頭を下げたいところだ」
そんなピオニーは全面的に感謝の意を込めた言葉をくのいち達に向ける。本当にそう思っていると分かるほど誠実に。
「陛下、そろそろ本題に入らねば・・・」
「・・・あぁ、そうだな・・・」
だがそんな空気を脇に控えていたゼーゼマンという参謀の人物が声をかけてきたことに、ピオニーは一気に空気を引き締めて重い物へと変えた。
「取りあえずはそちらへの感謝の意は伝えた。が、こちらとしてはまだ幾分か聞かねばならぬ事がある。答えてもらえるか?」
「我々にお答え出来ることでしたら」
「そうか・・・では早速まずは本題を聞くが、マクガヴァン親子からの手紙でそちらがダアトの改革・・・もっと言うなら大詠師に謡将の排除も視野に入れた行動を取るつもりだとの事だが、それは間違いではないんだな?」
「はっ。それは間違いありません。その為にもマルクトには最低でも静観か、よろしければ協力を願いたいのですが・・・」
「こちらとしてはそちらの邪魔をするつもりはないし、むしろ静観だけでなく協力もしたいところだが・・・導師は実際の所はどう思っているんだ?手紙によれば丞相の考えに協力をするとこの件に関しては下の立場に立っているとは聞いているが、偽りの無い導師の本音を聞きたい」
「本音、ですか・・・」
それでくのいちへと真剣な会話をしていく中でピオニーはイオンへと本音について聞き、少し複雑そうな表情を浮かべる。
「・・・私としては、本来なら私が旗頭になって事に挑むべき事だと考えていました。ですが若輩の身でモースやヴァンと張り合うには知力でも武力でも、更に言うなら経験でも私には二人と対峙するための要素があまりにも足りなさすぎると言うことを自覚しています・・・ですからこそ私は力不足であることを含めた上で、丞相の指揮下という形で動くと決めたのです。私が無理に旗頭となるより、能力が極めて高いコーメイが旗頭となる方がいいと・・・」
「成程・・・事をうまく進める為にあえて下になることを選んだという事か」
それで意を決したとイオンが自身の考えを誠実に明かしていき、ピオニーは納得する。効率の為にも孔明が上に立つ方がいいのだとイオンが考えたという事に。








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