女忍、前進する

・・・それでモースに対する話からティアが中心になって進んだ話は終わり、後は特に特筆するような会話が辻馬車内で起こることは無かった。

ただそれから数時間後・・・辻馬車を用いてもマルクトの首都のグランコクマまでは数日かかるということで、馬車を引く恐竜達の休憩も兼ねてくのいち達は夜営を行う事になった。



「・・・成程、先程そのような事を・・・」
「近くにあいつがいっから大声は出せねぇけどよ・・・正直な所、今あいつに対してお前はどんな気持ちなんだ?リグレット」
「ティアに対して、か・・・」
・・・それで辻馬車から降りたルークはくのいちと二人で焚き火の前で思い詰めた顔をしているティアを辻馬車の横辺りから遠目に見つつ、目の前のリグレットへと先程の会話の続きのような事を問う。ティアに対しての気持ちを。
「・・・教官として教鞭を取った唯一の生徒で、最初こそ拒否をされこそしたが自分を慕ってくれた子だ。全く可愛くないわけでも心残りが無いわけでもない・・・だが最早ティアに対して私が教えられることはもうない。いや、正確にはティアが求めている答えをくれてやることは出来ないからこそ、私はもうティアに対して私から手を差し伸べる事はない」
「求めている答え?」
「セントビナーでティアが辻馬車の中で黙っていたと言ったが、そこから辻馬車に乗って降りるまでもずっとあの様子だった。それで私に何も聞きもせず黙っているのは何かを考えていることもあるのだとは思うが、おそらくは私から何か・・・もっと言うなら自分を助けてくれる言葉を求めて黙っていた可能性が高いと見ている」
「あ~・・・ボロクソにされてたのをまだ引きずってて、他ならない教官として信頼してるリグレットが助けてくれるのを待ってるって事か?」
「そういうことだ」
リグレットはその問いに自身の気持ち以上の考えがあることを明かし、ルークも納得する。ティアが無言の助けを求めているとリグレットは感じたのだと。
「まぁ私がそうするのもだろうが、導師に奥方に丞相・・・とにかく自分より上の立場にいる者が助けてくれる事を望んでいるだろう。それも自分は間違ってないと肯定してくれる絶好の形でだ」
「間違ってないって・・・あんだけ散々叩きのめされたのに、まだ自分が間違ってないって思ってるのかよ・・・」
「それはティアがヴァンを止めることは間違っていないと思っているからであり、その考え自体は全く的外れでもないからだ。これが極端な例えとして和平に向かう導師を前にして戦争を引き起こしていると言うならそれは完全な間違いと言えるが、ヴァンのやろうとしていることは放っておけばオールドラントの大事に関わる問題となる・・・ティアはその事は理解はしているが、ヴァンに対する気持ちを入り混ぜて考えていることで客観的な視点で物を見ることが出来ていない。あれだけ丞相や奥方達という客観的な視点から色々言われているにも関わらず、自分のやっていることは客観的な視点で見ても間違ってない・・・と考えることでだ」
「・・・なんつーかそれ、自分で言ってて嫌じゃねーか?俺は分かりやすく聞けるから別にいいって言いてぇけど、色々考えたっつってもそんな風に事細かに嫌なとこ上げてってよ・・・」
「・・・もう今更だ。それより気遣ってくれたことは礼を言っておこう」
その上でティアがいかに視点を変えれず物を見ているのかと説明するとルークが心配してくるが、リグレットは気にしてないといったように首を横に振る。











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