女忍、前進する

「・・・三人とも頭抱えてっけど、そこまであいつの行動って悪い意味で予想外だったのか・・・?」
「そりゃもう・・・元々謡将を刺した時でさえ結構ヒヤヒヤしたんだよ?旦那様の策じゃ二年先の予定だったのに、そこで謡将の事をバラされてたら準備もロクに出来ないまま予定を前倒しにしなきゃならなかったし・・・ただ何を思って黙ったのかは私達には分からなかったけど、それでも黙っててくれる分にはこっちとしてもちょうど良かったんだ。下手に接触してもそれこそ色好い返事になるかどうかすっごい怪しかったしね~」
「まぁさっきの話を聞いてりゃ、そう思うな」
「うん。それで一年も経った頃にはティアは神託の盾として普通に活動してて、謡将に近付くような素振りは見えなかったから大丈夫だろうって思ってたんだよ。だからまた同じ事をするとは思わなかったんだけど・・・」
「それを起こしたんですよ。それも丞相の策を実行に移す直前といったタイミングな上、バチカルというそこで襲わなければならない理由などない場所でね」
「何となくティアの感じからするとダアトでやらなかった理由はダアトでやると迷惑がかかるから、ならダアト以外の場所でって程度の感じが今まで接してきた態度から見えるのが余計嫌な気持ちになるんだよね~・・・ティアの行動の仕方っていうか考え方って、典型的な偉ぶったローレライ教団員の中でも特に勘違いした人の感じだし」
「そこまでひでぇのかよ、ティア・・・つーかそんなにローレライ教団員の質ってやべぇのか・・・」
ルークはそのリアクションをさせるティアについてを更に詳しく聞くが、くのいちだけでなくディストにアニスまで策があること抜きにしても滅茶苦茶・・・特にアニスの言葉に、ルークは引いていた。ティアも含めて、ローレライ教団員はそこまで酷いのかと。
「ローレライ教団員って預言が第一って考えだけならまだいいけど、そこに自分達が預言を世界に供給してる大本で下手な貴族なんか歯牙にもかけないくらい偉いって思ってる人なんかいくらでもいるんだよ。実際に神託の盾がセントビナーの街を取り囲んだ時だって預言の事があるからマルクトはダアトに反抗出来ないだろうっていう、そんな心理を逆手に取って堂々と行動したんだろうしな~」
「・・・そうなのか、ディスト?」
「確かに事実ですよ。まぁ私達はあくまで本気で導師達を捕縛しようとする体だけでしたが、多数の教団員の持っている価値観ならこうするだろうとは理解していました・・・そしてアニスの言ったように照らし合わせて見ると、ティアの行動はそういった教団員の特徴に違っていないんです。謡将率いる神託の盾は別にしても、一般的なローレライ教団員は基本的にダアトに迷惑を被らせるような事態になるのを嫌がるんですが・・・それが何故か分かりますか?」
「・・・ローレライ教団に預言を信じてるから、か?」
「間違ってはいませんが、それだけでは不十分です・・・私が言いたいのはそうやって信じる反面、見放されることを恐れているからです」
「見放されることを、恐れる?」
「信じる者は救われるといった言葉がありますが、ローレライ教団はただ預言を崇めて信じるなら何をしてもいいといったように教えている訳ではありません。そんなことを教えとしているなら今頃ダアトはその態度を不快に思ったキムラスカかマルクトによって制圧され、預言を詠むためのノウハウだけを奪われて後は一領土程度の扱いを受けていたでしょうからね・・・まぁ今のは一例ですがそういった行き過ぎた行動に対しての牽制に制裁の意味もあって、あからさまに調子に乗ってダアトにとって良くない行動を取った者は処刑されることもありますが、大抵は教団から破門を食らいダアトの地を二度と踏めぬよう追い出すといった処置を取られます。こんなことをしたならもうローレライ教団の一員には戻れない・・・そう見せしめる意味合いの為にです」
「・・・つまり悪いイメージを持たれてダアトから追い出されたくないから、ティアはバチカルで行動したってのか?バチカルならダアトと関係無いから、ダアトには迷惑はかからないだろうって事でか?」
「アニスの話を踏まえた上で仮定するなら、ですけれどね」
それでアニスの話す中身からディストへとルークは質問の矢先を変えると、出るわ出るわのティアの悪印象に繋がる話の数々にルークの顔が極めて胡散臭そうな物を見るような表情に変わった。












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