軍師、後始末をする

「無論、今言ったことになる可能性は絶対という訳ではありません。あくまで可能性の一つに過ぎませんが、それ以上の事もそれ以下の事も大詠師は行いかねません。事態の解決の為にです・・・そうなれば私でも取り返しのつかない状況になりかねませんので、いっそその事を知らせた方が彼も安心した上で行動すると思ったんです。極めて予測がつけやすく、自分自身は絶対に安全圏を保とうとする形でね」
「成程・・・そういう訳ですか」
孔明はあくまで可能性としつつ言った方がいい訳についてを改めて説明し、リグレットは納得する。
「まぁその辺りで貴女方に導師を取り返すようにと命令する事になるのですが、大方私の予想した通りでしたでしょう。彼の出した命令は」
「えぇ、それは。そして案の定、ベルケンドの謡将も呼び戻すという風に言っていました。モースからしてみれば余程和平が成り立つと言った事になるのは避けたいのでしょう」
「やはりそうなりますか・・・ではこれを受け取ってください」
「これは手紙?それも二通も・・・」
それで会話を続けていくのだが孔明が懐から二通手紙を取り出して渡してきた事にリグレットはどういうことかと首を傾げる。
「上の方は下の手紙の中身の説明及び取ってほしい行動についてを記した物です。口頭で説明するには長くなりますし、あまり時間をかけていると貴女の事を不審に思う者も出てくるかもしれませんからね。道中で読んでいただければ構いません」
「・・・分かりました、では怪しまれない内に私は戻らせていただきます」
「頼みましたよ、リグレット」
孔明は手紙と共に時間をかけないように配慮したとの旨を伝えるとリグレットもすぐに理解を示して頭を下げた後に部屋を後にしようとし、その後ろ姿にそっと一声かける。
「・・・これからの展開次第ではありますが、そろそろ私が動かねばならない時になりそうですね」
そして一人になった孔明はそっと口にする、これから自分が動かなければならないと予感めいたことを・・・


















・・・だが、その孔明の予感は予想外でいて良くない方向に当たることになった。それはリグレット達がダアトより出立して、数日後の事となる・・・



「・・・皆さん、お呼び立てしてすみません。ですがそれだけの事態だということは皆様もご理解していただいての事と思います」
「「「「・・・」」」」
ダアトの会議室の中、大詠師の下の地位にいる詠師達六人を前にして羽扇を手にしながら孔明は緊迫した状況と話す。詠師達もまた中身を理解しているからか、余計な言葉を挟まず真剣に話に聞き入る。
「今回皆様をお呼び立てした訳は他でもありません・・・つい先日、神託の盾所属であり謡将の妹でもあるティア=グランツがキムラスカのバチカルにて、謡将を襲う為にファブレ邸に譜歌を歌いながら押し入るという前代未聞の事件を引き起こしました。それもファブレの一人息子であり次期王となる身である、ルーク殿と疑似超振動を起こして共にマルクト方面に飛ばされる・・・という、最悪の結果付きでです」
「っ・・・報告は受けてはいましたが、改めて言葉にされるとかなり効きますね・・・そこまでの事件が起こされたという事実は・・・」
そして孔明は詠師達を呼び出した本題とも呼べる中身についてを口にすると、詠師達の代表格であるトリトハイムの言葉に他の詠師達も共に表情を辛そうに歪める・・・他国の貴族の家に一兵士が武力を持って押し入り、次期王と目される人物と共に行方不明同然に飛ばされたという事実が重くのし掛かる形で。











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