軍師、勧誘する

「・・・何のご用でしょうか、丞相?」
「あぁ、来ましたねリグレット」
・・・ダアトのとある部屋の中。机の前に来て形式的に質問をするリグレットに、椅子に座っている丞相と呼ばれた人物・・・孔明(この丞相という呼び名は詠師より下の立場ではあるが、大詠師であるモースが自身に関する問題は孔明を通せと些事を押しつ・・・任せたことから、そういった存在であるという独自の役職を作って役職名を付けようとした時に孔明自身から丞相という呼び名でと出てきたのだ。そしてならそれでと特に反発も起きなかった為に丞相という役職名になったのだ。本来の丞相はどういった役割に立場に意味なのかといったことなどダアトの人間は気にしないままに)は淡々とした口調で答える。
「聞きたいことがあります・・・今現在貴女は謡将の元にいますね?その謡将により前の地位から引き抜かれる形で」
「・・・えぇ、そうですが何か?」
「単刀直入にお聞きしますが、貴女と謡将の間で何が起きたのですか?」
「・・・何故そのようなことをお聞きになるのでしょうか?丞相には関係の無いことだと思うのですが・・・」
それで二人は会話を交わしていくが、次第にリグレットが主になってピリピリしていく様子に場の空気が重い物に変わっていく。
「・・・すみません、入ってきてください」
‘ガチャッ’
「・・・一体、何を・・・っ!?」
ただ孔明は怯んだ様子もなく入口の方に声をかけ扉が開かれたのを見てリグレットは何事かと振り返ると、信じられない物を見たと大きく目を見開いた。



「マルセル・・・なのか・・・!?」



・・・その扉から現れた姿は、かつて戦争で死んだはずのリグレットの弟であるマルセル=オスローであった。
たまらず声を漏らすリグレットだが、弟という事もあり似た面影のあるマルセルの顔が苦く歪む。
「そうだよ、姉さん・・・だけど、俺はこんな形では出会いたくなかった・・・丞相から、謡将の行動に賛同して動こうとしてるなんて知った後で・・・」
「っ、丞相・・・これはどういうことですか・・・!?」
「・・・簡単に言いますが、マルセルを始めとした死ぬという秘預言の詠まれた人物達を私が助けたからです。彼が生きている理由はね」
「なっ・・・!?」
そしてマルセルが責めるような口調で向けてきた事に本人に質問せず孔明に振り返り訳を聞くが、口調を変えることなく何事もないとばかりに告げられた事実にリグレットは絶句した。と言ってもリグレットは単にその中身に絶句しているのではない・・・
「・・・やはり意外ですか?貴女からして教団の人間というか、預言保守派である私がそんな行動を取ったという事実は」
「っ・・・・・・正直に言えば、そうです。まず死を詠まれた預言など表に出す者はおろか、そんな人物を救おうとする者はダアトの中にはいるはずがないと思っていました・・・」
・・・そう、比較的に教団の中心に近く預言を達成することが生き甲斐の筈の立場にいる孔明がそんな行動を取ったからだ。
孔明が動揺の意味を正確に読んだように声をかけてきた事に、更なる動揺の後に自身の心の内を隠すことが出来ずに考えを漏らしていく。自身もダアトの人間であるはずなのに、全くダアトの人間に対しての信頼などないとばかりの考えを。










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