女忍、前進する

「ではそろそろ行かれるとよい。そちらとしてもあまり時間をかけたくもないだろうし、謡将達が行動する時期が早ければ早いほどそちらとしてもあまり望ましくないでしょうからね。陛下への連絡は話をしたよう私達が致します」
「ありがとうございます。では行きましょう、カーティス大佐」
「えぇ・・・では失礼します、元帥」
それで早く出立するよう勧めるマクガヴァンにくのいちも反論せず、ジェイドの礼の後に一同は場を後にする。



「・・・改めて思いましたが、今こうやって普通にしている貴女と元帥の前で話す貴女の姿は本当に違いますね」
「ん~?別に当然じゃない?人前で態度を使い分ける事くらい」
「それは確かにそうですが、モースに対しても元帥に会った時のように振る舞っていたのですか?」
「まぁどうしても会わないといけなかった時に仕方無く会ってた程度だけどね~。それに向こうは私に興味なんてなかっただろうしね。旦那様の嫁程度にしか認識してなかったろうし」
「・・・と言うことは、貴女はダアトで表向きはほとんと活動していないんですか?」
「そりゃね~。私の役割を考えると派手に目立つのもそうだけど、実力を知られるとあんまり良くないのは目に見えてたし。特にモースに私の実力がバレてたら、旦那様を通り越して私に色々命令してたと思うよ~。大佐殿にも関連するようでいて出しそうな命令で言うと、バチカルに着いた後の時は相当に怒ってたから手段を問わないから死霊使いを殺せ・・・くらいのことは私に八つ当たり気味に言ってたかな?」
「っ!・・・そう考えれば、貴女の実力をモースが知らなくて良かったということですか・・・」
「大佐殿の事だから簡単にやられちゃくれないだろうけど、そんなこと関係無いからやれって言ってただろうね~。失敗したら全部の責任は私に押し付けて、どんな言い訳をしても私はそんなこと知らぬ存ぜぬの一点張りでね」
・・・それでマルクトの基地から出た一行は、唐突に思い出すようにしてくのいちに向けた声により足を止める。
くのいちはそんなジェイドに対して自身の予想を軽い様子で口にしていくが、ジェイドは対照的に表情を苦く歪ませる。もしもの可能性でくのいちと戦うこと及び、人知れず殺される可能性もあった・・・そう聞かされて。
「モース様が・・・そんなことを命令するなんて・・・信じられない・・・」
「ん?・・・リグレット、この子辻馬車の中でどういった様子だったの?」
「辻馬車の中では特に目立った発言をする事もなく、ジッと何かを考え込むように座っていただけです。おそらく自分の中で色々考えていたのでしょうが、この様子ではまだ割り切れた考えは持てているとはとても言えませんが」
「だろうねぇ~、まだモースに対して夢見てるっていうような事を言ってるところを見るとね」
そんな時にボソリと暗く表情に影を落としたティアの声にくのいちはリグレットに何があったかを聞き、その返答に納得と共に呆れがこもった声を漏らす。
「ま、いいや。別に今の状況でモースに真意をどうとか尋ねるとか無理だし、何か変わったことがあったら後で教えてねリグレット~」
「はい、では辻馬車に乗りましょう」
その上で気楽にティアの事はどうでもいいといったように話を進めるくのいちに、リグレットもまたそれに同意して早々と話を進める。かつての教え子に対して興味も心配もなく、ただ淡々といったように・・・












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