女忍、前進する

「言ってしまえば今のアッシュの状態は情緒不安定、この一言に尽きると見てます。そうなったのは謡将の洗脳が不完全と言うべきか、アッシュのキムラスカへの望郷の念が想像以上に強かったからなのか、はたまたそのどちらもなのか・・・真相はさておきとしても、アッシュのあの状態は安定しているとはとても言えません。それこそアッシュは深く考えずに謡将に付いていけないといった気持ちを抱き、裏切ったと見た方がいいでしょう。そして今は奥方のおかげでこちらについていてはくれていますが、彼を野放しにしたならこれからどうなるかは丞相でも予測をつけることは難しくなるでしょう」
「そこまで、言うのか・・・?」
「情緒不安定であるからこそ読みにくいんです。もし例えば全部が終わってキムラスカにアッシュが戻らないと選択した後、キムラスカが自分に取ろうとしていた行動についてを報復したいと思う可能性も全く無いと言えません。そしてこれはあくまで一例であって、何かまた別の考えを持つ可能性も否定出来ないんです・・・そういった予測出来ない行動を、何時なんどき世界を揺るがす形で起こすか分からない形でです」
「っ!・・・そんなに、あいつヤバいのか・・・」
そんなディストはアッシュの事を情緒不安定と言った上で行動が悪い意味で読めないと話していき、ルークもその危険さを感じて愕然と表情を揺らす。
「少なくとも私はそう見ていますが、奥方にアニスはどう思っていますか?」
「私も同じ意見だよ~。まずアッシュがずっと一人大人しくなんて有り得ないだろうし」
「私も同じかな・・・それでアッシュが何かするならマルクトは対象から外れて、ダアトに神託の盾も謡将がいないなら何かしようってこだわる理由も無いだろうから・・・やっぱり何かやるならキムラスカで、ルークもその対象に入るって可能性は高いと思う・・・」
「っ!」
その上でくのいちとアニスに意見を求めるディストに二人は答えるが、気まずげなアニスの目と答えにルークは息を呑む。自分がその対象になることに。
「おそらくアニスの言う通りでしょう。ですがキムラスカに対してはまだ未練があったようなので報復か戻りたいかは確定はしませんが、ルークの事に関しては攻撃性の行動を取ることはまず間違いないでしょう。どのように言ったところでアッシュの中にある貴方への尋常ならざる敵意はもう変えることは出来ない段階になっていますからね」
「・・・そこまで、なのかよ・・・」
「はい、そこまでになります・・・本来なら私やリグレット達がどうにかするべきではないのかと言った声が向けられてもおかしくはない状況だと思いますが、下手に我々がアッシュに関与しようとすれば謡将に怪しまれることもそうですが、中途半端な励ましだったり希望を持たせるような言葉をかけるのは却って逆効果にしかならないと感じたからなんです。キムラスカが預言の為に『聖なる焔の光』を犠牲にしようとしていることに貴方を『ルーク』として受け入れた事・・・この二つは紛れもない事実で、それを否定するような事を言えばその時点で謡将に反旗を翻すであったりどうあってもキムラスカに力づくで戻る・・・と言った事を我々の気持ちやその後の結果など、全く考えぬままに行いかねない可能性があったためにね」
「・・・そんなことをされたらもうどうにもならなくなるから、お前らは何も出来なかったって事か・・・」
「はい・・・それが慎重を期する為と理解はしていましたが、何も出来ないのは歯痒い物でした・・・」
そこからアニスの言葉を補足しつつルークへの殺意についてとアッシュをどうにも出来なかったと述べるディストに、ルークは複雑な表情を浮かべる。ディスト達自身も色々考えて選択しているのだと、思い悩んでいるその表情から感じて文句が言えないと思った為に。











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