女忍、前進する
「あいつ・・・なんでそこまでして俺を殺したいだなんて思ったんだよ・・・俺、あいつに会ったことなんてこの旅で初めてなのに・・・」
「・・・貴方も事実を受け止めているので言葉を選ばずに言いますが、謡将の洗脳のせいですよ」
「えっ・・・師匠の、洗脳・・・?」
ルークは何故と困惑を更に深めた表情を浮かべ、ディストは多少言いにくそうながらもヴァンの洗脳のせいと口にする。
「元々アッシュは謡将になついてこそいましたが、それでもキムラスカに対して望郷の念が全く無かった訳ではありません。むしろ彼の望んでいた物はキムラスカで王族としての責務を果たそうとナタリア様と共に邁進していき、時たまダアトから来る謡将と師と弟子としての時間を過ごす・・・そんな子どもが見る夢の理想のような物です。ですが謡将がキムラスカから彼を引き剥がしたことはそんな彼の精神状態を不安定にさせたんです。キムラスカには戻りたいけど、謡将の元にいなければ自分の身が危ういし何より謡将が自分に嘘をつくはずがない・・・ならどうすればいいのかと、そういった具合に悩む形でです」
「・・・それで、師匠がアッシュを洗脳したからアッシュはあぁなったってのか・・・?」
「そうしなければもっと早い時期にアッシュは行動を起こしていたでしょう。そしてそうさせない為の洗脳の手法として、謡将はこんな状況にした自分に対する疑いの目を貴方に逸らす・・・という手を取ったんです。キムラスカに戻れないのはルークがいるから、今更戻って自分が本物の『ルーク』だなどと認められるはずがない、よしんば認められたとしてもキムラスカから結果はどうであれ、逃げ出したお前をキムラスカが何のおとがめもなしに許すはずがない、だからお前の居場所はここしかない・・・簡潔にまとめましたが、こういった事を吹き込み続ける形でです」
「っ!?・・・そんなことを、アッシュは師匠から言われ続けてたってのか・・・!?」
「はい。この話で最も厄介なのは、預言の事もあってキムラスカがアッシュの扱いを良くしないだろうという所が一番のポイントになるんです。もしアッシュが無理を押し通してでもキムラスカに帰って、諸手を上げて無条件に歓迎などされるはずがない。むしろろくな扱いをされるはずがないし、何だったらルーク・・・事実を知ってまた逃げ出しかねないアッシュより、貴方の方が扱いやすい上に逃げ出す可能性も極めて低い・・・そういったリスクを考え、貴方を担ぎ続けた上でアッシュを排除しようとした可能性も全く無かったとも言えません」
「・・・っ!」
・・・ディストから次々と口にされていくヴァンの洗脳の言葉に、もしもの時にキムラスカが取っていた可能性のある行動。それらを受けてルークは表情を青ざめさせると共に絶句した、あまりにも非人道的な物ばかりな内容に。
「・・・謡将の言葉は当時10才程度のアッシュにとっては何よりも衝撃で、何よりも影響を及ぼしました。そしてその衝撃でキムラスカに対しての不審を覚えさせると共に、結局キムラスカに戻れないのはルークが一番の原因・・・そう思わせることで、謡将はアッシュを手元に置くことに成功していたんです。ただそれも、こうやって彼が離反した事で完全な成功とは言えない物になりはしましたけどね」
「・・・完全な成功じゃない?何で失敗って言わないんだ?」
「洗脳自体はある程度成功、いえ成果と呼んだ方がよろしいでしょう。実際にアッシュの心を変えるように洗脳した成果は出てはいますからね・・・ただ、その成果が中途半端に出ていることがある意味成功か失敗のどちらかに寄った物より厄介なんです。これからを考えるとね・・・」
ただ話を止めず尚も続けるディストは洗脳の成果を中途半端と言い、タメ息を吐かんばかりに頭に手を添え疲れた表情を見せる。
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「・・・貴方も事実を受け止めているので言葉を選ばずに言いますが、謡将の洗脳のせいですよ」
「えっ・・・師匠の、洗脳・・・?」
ルークは何故と困惑を更に深めた表情を浮かべ、ディストは多少言いにくそうながらもヴァンの洗脳のせいと口にする。
「元々アッシュは謡将になついてこそいましたが、それでもキムラスカに対して望郷の念が全く無かった訳ではありません。むしろ彼の望んでいた物はキムラスカで王族としての責務を果たそうとナタリア様と共に邁進していき、時たまダアトから来る謡将と師と弟子としての時間を過ごす・・・そんな子どもが見る夢の理想のような物です。ですが謡将がキムラスカから彼を引き剥がしたことはそんな彼の精神状態を不安定にさせたんです。キムラスカには戻りたいけど、謡将の元にいなければ自分の身が危ういし何より謡将が自分に嘘をつくはずがない・・・ならどうすればいいのかと、そういった具合に悩む形でです」
「・・・それで、師匠がアッシュを洗脳したからアッシュはあぁなったってのか・・・?」
「そうしなければもっと早い時期にアッシュは行動を起こしていたでしょう。そしてそうさせない為の洗脳の手法として、謡将はこんな状況にした自分に対する疑いの目を貴方に逸らす・・・という手を取ったんです。キムラスカに戻れないのはルークがいるから、今更戻って自分が本物の『ルーク』だなどと認められるはずがない、よしんば認められたとしてもキムラスカから結果はどうであれ、逃げ出したお前をキムラスカが何のおとがめもなしに許すはずがない、だからお前の居場所はここしかない・・・簡潔にまとめましたが、こういった事を吹き込み続ける形でです」
「っ!?・・・そんなことを、アッシュは師匠から言われ続けてたってのか・・・!?」
「はい。この話で最も厄介なのは、預言の事もあってキムラスカがアッシュの扱いを良くしないだろうという所が一番のポイントになるんです。もしアッシュが無理を押し通してでもキムラスカに帰って、諸手を上げて無条件に歓迎などされるはずがない。むしろろくな扱いをされるはずがないし、何だったらルーク・・・事実を知ってまた逃げ出しかねないアッシュより、貴方の方が扱いやすい上に逃げ出す可能性も極めて低い・・・そういったリスクを考え、貴方を担ぎ続けた上でアッシュを排除しようとした可能性も全く無かったとも言えません」
「・・・っ!」
・・・ディストから次々と口にされていくヴァンの洗脳の言葉に、もしもの時にキムラスカが取っていた可能性のある行動。それらを受けてルークは表情を青ざめさせると共に絶句した、あまりにも非人道的な物ばかりな内容に。
「・・・謡将の言葉は当時10才程度のアッシュにとっては何よりも衝撃で、何よりも影響を及ぼしました。そしてその衝撃でキムラスカに対しての不審を覚えさせると共に、結局キムラスカに戻れないのはルークが一番の原因・・・そう思わせることで、謡将はアッシュを手元に置くことに成功していたんです。ただそれも、こうやって彼が離反した事で完全な成功とは言えない物になりはしましたけどね」
「・・・完全な成功じゃない?何で失敗って言わないんだ?」
「洗脳自体はある程度成功、いえ成果と呼んだ方がよろしいでしょう。実際にアッシュの心を変えるように洗脳した成果は出てはいますからね・・・ただ、その成果が中途半端に出ていることがある意味成功か失敗のどちらかに寄った物より厄介なんです。これからを考えるとね・・・」
ただ話を止めず尚も続けるディストは洗脳の成果を中途半端と言い、タメ息を吐かんばかりに頭に手を添え疲れた表情を見せる。
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