「・・・アッシュ。お前が謡将を裏切ったのは謡将が自分が思うような人格者たらんとしていなかったから・・・だろう。だから、とも言えるがある意味ではお前の方が今となって考えてみればティアより危ういと感じる。ヴァンという信じる者が信じれなくなったと、そう認識して自身で判断したのはティアよりはマシだ・・・だがその反面、お前は自分の見て信じる物こそが全てと自分の出した結論を疑えない性質を持っている。現に今お前は私の事を聞いてもそれが事実と認識しきれずにいた。私のイメージを崩しきれずだ」
「っ、それの何が悪い・・・そもそもを言うなら、テメェらが俺に何も分からないように隠していたから・・・」
「そうされてキムラスカから離れ、キムラスカには戻らないとお前はヴァンの元に身を寄せた。自分が死なないことに加え、ヴァンを誰よりも師として見ていたからだが・・・今度はそのヴァンを見限った。それも自分以外誰も信用などせず単独で裏切ろうとする形でだ。おそらく今奥方ががこうしてお前と接触して半ば無理矢理にでも付いていくようにと言わなければ、そもそもアクゼリュスの崩落を止めるようにと丞相が動いていなければお前があの男の企みを止めれたなどとは私は到底思わん。良くてヴァンの隙をついて怪我をさせることが出来たくらいで、悪ければ返り討ちにあった挙げ句身柄を拘束され神託の盾に持ち帰られ今度は裏切られないようにと洗脳を施されるか、事が済むまで軟禁でもして全てが終わり取り返しのつかない状態と認識させて無理矢理にでも抵抗はもう意味がないと諦めさせる・・・と言った風になっていただろう」
「き、貴様・・・！」
「反論したいか？そんなことにはならないと。だがいいところお前の実力はディストにアリエッタは仕方無いにしても、私やシンクにラルゴと同程度のレベルでヴァンに一対一で肉薄出来るレベルとは言えんのが実情だ・・・それすらも分からないほどお前も物分かりが悪い訳ではないだろう。それとも初めからヴァン相手に死ぬつもりでお前は裏切ろうとしていたのか？・・・誰も頼る者などいないが、せめて敵わぬなら自身の命を捨ててヴァンの企みを少しでも狂わせてやろうとでも思って」
「っ・・・！」
「・・・どうやら核心とまでは言わずとも、多少なりはそういった事を考えてはいたようだな。だからこそ言える。お前がティアよりある意味厄介というのは間違いではないと」
・・・冷徹な表情を見せ話を進めていくリグレットに対して、アッシュはどんどんと圧されて口数が少なくなっていく。理想と現実、そして口にされた推測が的を得ていた事に。
だがリグレットはまだ話は終わりではないと、更に唇を動かす。
「お前とティアの違いは人に頼るか頼らないか、だ。とは言えティアは人を頼るというより自分の思い通りの展開にしたい時や人の手が無ければ何かを為し遂げる事が出来ない時、やむを得ない状況に限るだろうが・・・お前はそうはしない。頼る頼らない云々ではなくだ。精々誰かの手が無ければどうしようもない時に誰かを頼るのではなく、その人物を無理矢理にでも動かそうとするだけ・・・誰も信用しないが為にだ。そんなお前がヴァンを止めることなど出来るはずがないだろう。結局お前は一人だけしかいないのにそのヴァン一人に敵わない・・・それを分からず、改善しようともせず動こうとしていたのだからな」
「っ・・・！」
頼るか頼らないか・・・ティアとの根本的な違いとその考え方の欠点を容赦なく口にするリグレットに、アッシュは怒りを抑えながら悔しげに歯を噛み締めた。ヴァンとの実力差はいかにアッシュとて・・・いやその実力を知るアッシュだからこそヴァンに絶対勝てると言い切れない点をつかれた為に。













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