女忍、前進する

「・・・それについては俺も賛成ではあるんだが・・・ティアはどうするんだ?気絶させたまま放ってあるけど、このままタルタロスに乗せていて大丈夫なのか?起きたらどうなるか正直、俺には予測がつかないんだが・・・」
「あ、そっか。まだタルタロスを使うものだと思ってたから、ティアの事を乗せたまんまだったね」
そこにガイが賛同しつつもティアの事を口にした事に、くのいちは軽く今思い出したと口にする。
「・・・どうするんですか、ティアの事?」
「ん~、連れてはいくよ。ティアからしたら不満とか色々あるのは目に見えてはいるけど、性格とか考え方に状況・・・そういった諸々から私に反旗を翻すとは思えないし、旦那様と合流したら尚更逆らうなんて出来ないだろうしね~」
「成程・・・まぁこちらに迷惑がかからないのであれば構いませんよ。ただ、連れていくといった以上はそちらで面倒を見てくださいね」
「構わないよ~。こっちが言い出したことだしね」
ジェイドがその姿に若干警戒気味にどうするのかと聞いてきた為、どうせ反旗は翻さないから連れていくとくのいちは返した為にティアの面倒を暗に見る気はないと告げる。だが明らかに厄介払いをされたはずのくのいちは気にすることなく笑って了承した。
「んじゃ私はちょっとティアを起こしに行ってくるから少しの間待っててね」
‘ザッ’
「あっ・・・消えた・・・!」
「・・・つくづくあの人の異質さを痛感させられますね・・・おちゃらけた態度とは裏腹の鋭い洞察力に思考もそうですが、あの動きの鋭さ・・・本当に敵に回すような事にならなくてよかったと思います」
それでさっさと行くと場から一瞬で消え去ったくのいちの姿に、ガイは呆然と呟きジェイドは警戒染みた言葉を漏らす。
「姉さん・・・」
「マルセル、久しぶりだな・・・だがゆっくりもしていられない。早速辻馬車の方に連絡を入れてくれ。早ければ早い方がいい」
「分かった、すぐに用意する」
そんな二人を傍目にマルセルはリグレットに話し掛けるが、当のリグレットが挨拶もそこそこにして姉弟らしい会話をせずに切り上げたことにすんなり頷き場を離れるその姿にアッシュは物珍しい目を向ける。
「・・・弟がいたのか、リグレット」
「あぁ。だが丞相に助けていただかねば預言保守派にもだが、それ以上に謡将に見捨てられ殺されていた存在だ」
「何・・・っ!?」
「・・・意外そうにリアクションしているが、謡将がそんなお優しい考えをしていないことなどお前もよく知っているだろう・・・と言うより、あの男が身内以外に外行きの顔で見せる上っ面の物以上に優しくするような事などあるはずがない」
「っ・・・謡将呼びも違和感を感じて仕方なかったが、まさかお前の口からヴァンの事をあの男と言った呼び方で聞くとは・・・」
「それほどに私はあの男の副官であることが当然だとお前は思っていたのだろうが、丞相に会う前ならいざ知らず今の私にはあの男に対しての忠誠などない。そしてその忠誠を誓っていたように見えた姿も全て演技で、お前が見ていたあの男とのやり取りは大半はそんな演技の元での物だ。それから外れた私の態度を見て違和感を感じるのは当然だが、これ以降は気にするな。一々その事を切り出されても面倒だし、何より私が不快だ」
「・・・そこまで言うのか、お前が・・・」
それでたまらずマルセルについてをリグレットに話し掛けるアッシュだが、次第に会話の流れがヴァンの方へと行って最早信頼など欠片もないといった口振りで返され唖然としたように漏らす。未だリグレットがヴァンを裏切ったことが信じられていないとばかりに。








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