女忍、邁進する

「・・・しかしガイがガルディオスの生き残りとは・・・リグレットにディストの二人に聞きたいのですが、本当にガイがガルディオスかは知らないのですか?」
「あぁ、知らない」
「私も知りませんよ。謡将は我々の事を部下として信頼していなかった訳ではありませんが、プライベートについてはほぼ聞いたこともありませんでしたし向こうもわざわざ話そうとはしませんでした。ですからガイの事を確定させたいのであれば本人に口を割らせるか、謡将を捕らえるなり何なりした後に聞き出した方が楽だと思いますよ」
「・・・謡将の性格を考えれば裏切った貴殿方に対してガイの事を正直に言うとはあまり思えませんが、出来るのですか?そんな簡単に・・・」
それでジェイドは改めてリグレットとディストに対して証拠についてを聞くと、ディストがヴァンに聞けばいいと言ったことに疑いを持つ。容易に出来る事なのかと。
「状況次第ではあるでしょうが、彼の性格を逆手に取れば不可能ではないでしょう。その上で丞相にどうするかを任せれば謡将の口を割らせるのはどうとでもなるでしょうが、その前にガイの口を滑らせる策でも考えてくれるかもしれませんがね」
「・・・丞相、ですか・・・貴方が私達以外の誰かを評価するのは珍しいですね。改めて思いますが」
「それは当然ですよ。あの方は私や貴方とは別の方向で天才です。流石に研究職としての私に貴方とは分野が違いますから比較は出来ませんが、戦場での指揮に関しては貴方より丞相の方が上を行くでしょう」
「・・・私の指揮より丞相の方がいいと?」
「丞相が言うには貴方は筋は確かにいいそうですが、兵法書を読んでそれまでといった甘さを感じたそうです。それでも他国に名を轟かせる辺りは貴方の能力に応用力は流石だという評価を丞相は下していましたが、詰めの甘さに元々研究職の気質があることから軍を率いて戦うならまず自身は負ける気はしない・・・丞相はそうおっしゃっていました。そして丞相の能力を少なからず目にしてきた私はその言葉通りになるだろうと見ています」
「っ・・・そこまで言いますか、貴方が・・・」
ディストは孔明に任せればどうとでもなると自信を覗かせながら言い、ジェイドはそこまで信頼を向けるとは思わなかったとばかりの言葉を漏らすが、ジェイド以上と言い切るそのディストの姿に若干不快げになるのを抑えつつ驚く・・・かつてじゃれあいつつもジェイド以上の天才などいないといった言葉を口にしてきたディストから、それらを否定するような考えが出てきたことに。
「だから言ったでしょう。方向性の違う天才だと。丞相自身我々と同じジャンルで競うような事になれば敵わないとおっしゃっていました・・・貴方は確かに万能な天才でこそあるのでしょうが、少なくとも軍を率いる手腕に策略を張り巡らせる事に関しては貴方より丞相の方が確実に上ですよ。そうでなければ私は今頃こちらに付いているような事などなかったでしょうからね」
「・・・策略ですか。普通に聞けばそんなことに長けているような人物を信頼出来るなどと言えるとは思えないのですが・・・」
「普通に聞けばそうでしょうね・・・ですがそういった丞相の能力がなければ、謡将の考えに振り回されて騙されたまま私は今頃真っ先に謡将に疑われて最悪始末されていたでしょう。自分が私を利用していることなど棚に上げる形でね」
「・・・成程、策略を張り巡らせるからこそ同じように策略を仕掛けていた謡将の企みに気付けた・・・そういうことですか」
「そういうことです」
そんな姿にフォローというより正確な事について訂正をするディストに、ジェイドもそこで納得する。確かに分からない理論ではないと。








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