女忍、邁進する

「推測混じりで証拠が無いのは否定出来ないけど、少なくともファブレをガイの為に滅ぼしてもいいと謡将が考えなかった理由に関しては今言ったことが一番しっくり来るんだよね~。謡将がファブレへの復讐を優先的に選んでたなら今頃ファブレはルークかアッシュ、どっちかだけ残してやってただろうけど」
「そうでしょうね・・・ただ謡将もそういった可能性を考慮した上で対策を取ろうとしたのではないのですか?ガイにどうにか手綱をつけた上で言うことを聞かせる為の対策を」
「ん~、対策って言うか説得って言った方が正しいと思うけどそれは聞き入れなかったと思うよ・・・謡将からしてガイをどうにかするのに手っ取り早いのはマルクトに戻すんじゃなく、神託の盾に部下として引き入れるのが最も安全でいて確かな方法だけれど・・・ガイはそれを拒否って言うかいい顔をしなかった可能性が高いんだよね、そうしたら安全じゃあるけどもマルクトに戻れないし何より戦争になんかならないってどこかで甘い見通しを持ってる形でね」
「ファブレが滅ぼされ、ガルディオスが戻ってきた・・・普通に考えればそのガルディオスの人間がファブレを滅ぼしたと思い追求をするのが当然、そしてキムラスカ側は嘘をつこうが正直に話そうがファブレを滅ぼしたのはガルディオスだと言いがかりをつけて戦争になる・・・が、簡単に予測出来るパターンの筈なんですけどね」
「その辺りは復讐と言うかやられた側の心理として、自分の行動は正当な物かもしくは大義があるみたいに感じてるからってのが大きいと思うよ。自分達は被害者だ、キムラスカの方から見ても同情されて然るべきだ、ガルディオスとして復讐を行うのは当然で大義もあって、ガルディオスの復興は自分の願いでもあると同時にマルクトの為でもある・・・まぁこれは極端な考えだってのは否定出来ないけど、ガイの気持ちの中にそういった気持ちが全くないと思えないってのもあるしね」
「・・・謡将辺りが本人に聞けば否定を返されるが、ガイ自身はどこか復讐が正当化されるのではないか・・・という期待を抱いている、と言うことですか」
「そういうこと。多分謡将はそういった楽観視にも似た甘えをガイから感じたから、無理を通して是が非でも自分の側に取り込んで助けるんじゃなくアクゼリュスの消滅に巻き込まれて死ぬのもやむ無しと判断したんだと思うよ。無理に助けてもガイじゃ説得なんて無理どころか、マルクトが無くなってガルディオスの再興が出来なくなる事に怒りを覚えた場合敵になる可能性が極めて高い・・・だから何も知らせず死んでもらった方が楽だって感じにね」
くのいちとジェイドは更にガイについての状況を存分に話していくが、その中身はあまりにもガイからして不本意な印象であると共に・・・最悪な結末について語られた物であった。どうにもならないから死を望まれた、状況が望んだ部分が大きいにしてもガイの扱いがあまりにも悪いとしか言えない物と。
「・・・ガイはそういった事について、今考えていると思いますか?」
「考えてはいるだろうけれど、多分今の話までの領域には辿り着いてはいないと思うよ?こういった時じゃなくても自分の事を客観的に見るのって難しいし、何よりさっきキムラスカやファブレに戻るかについて聞いた時にすごく動揺してた様子の事を考えると、まだファブレに復讐したいって気持ちが相当に残ってるのは見てとれた・・・多分謡将のガイにとって裏切りにも等しい行動が尾を引いてる部分も十分にあるとは思うけど、それ以上に自分の命と復讐をどちらを優先するかを天秤にかけてる所なんじゃないかな。あの様子だとね」
「・・・未だ二つを天秤にかけている、ですか」
「命あっての物種とは言うけど、ガイはホドでもそうだしアクゼリュスでも死ぬ可能性が高かった状態から普通に生き残った。そういった悪運の強さから復讐に関して私達が全部無事に済ませた後なら自分は復讐をやることが出来る、今度は謡将がいなくなっても無事に成功するんじゃないか・・・って希望的な観測があるんじゃないかと思うんだ」
「・・・そう思うだけならともかく、それを実行されたとしたなら我々からすれば相当に厄介なのですがね・・・特にガイが持ち前の悪運を発揮して生き残ってマルクトに戻った場合が尚更に・・・」
それでガイの心境について聞くジェイドにくのいちは迷いがある上で復讐を尚選択する危険性があると返し、頭に手を当てる。心底困ったとばかりに。













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