軍師、改善を行う

「ではそろそろトリトハイム殿もお休みください。私もそろそろ休ませていただきますので」
「はい・・・では明日お見送りに参りたいと思います」
「いえ、立場が下の私をトリトハイム殿がわざわざ見送りに行くなど何事かと捉えかねない上、出来る限り内密にダアトを出たいので気持ちだけいただかせていただきます」
「そうですか・・・ならばお見送りには向かいませんが、是非とも丞相の成功をお祈りしています。では、失礼します・・・」
それで話は終わらせようとする孔明にトリトハイムはせめてと見送りについて切り出すが、必要はないときっぱり理由つきで返され仕方無いと意気消沈しながらも深々と頭を下げて部屋を退出していく。
「・・・トリトハイム殿の性質であればこちらに間違いなくなびいてくれるとは思ってはいましたが、大詠師にまでなっていただきたいとまで言われるとは・・・本人が隠していた鬱憤は相当だった、と言うことでしょうか。モースに対して感じて溜め込んでいた不平不満は」
一人残った孔明は半ばタメ息を吐きそうになりながら、トリトハイムの想像以上の踏み込みに意外だったというよう漏らしつつも原因について口にする。モースがそれだけトリトハイム達に心の底から心酔されていなかったのだと。
「・・・とは言え、これは嬉しい誤算と言えます。今のトリトハイム殿にでしたら留守を任せても大事になりはしないでしょう・・・以前の私なら必要以上に自らで動こうとするあまり、自滅しかねませんでしたけどね・・・」
ただそこで孔明は自己嫌悪に近いと言ったような表情を浮かべ、ダアトは大丈夫だと口にする。



・・・孔明が自身の前世で最も大きな失敗だと思っていることは、人の考えていることは読めてもその心・・・言うなれば情と言った、理屈では推し量れない物を度々見過ごしてきた事だ。

私心を押し殺し、国の為に敵を倒す最良の選択をする・・・孔明はそうして前世で行動してきて多大な成果を上げてきたが、同時に前線に出過ぎて国内の安定よりも敵を倒さんとすることに集中しすぎて国内の政治をおろそかにしてしまった。その事により政治に問題があると知ったのだが、それでも敵を倒す事を止めることが出来なかった孔明は国内の安定を残った人々に任せる以外に出来ず・・・結局は敵を倒す事も出来ず、世を去る事になった。

その時の事があるからこそ、孔明は今回は自身を戒める・・・そして今度はちゃんと周りを見て人を信頼した上で、是正を行うと決めたのだ。一人で全て行うのではなく、信頼出来る者を見付けて治世を行うと。















・・・それから翌日、孔明はダアトを出た。後を信頼出来るトリトハイム達に託し、くのいち達と共にヴァン達を倒し是正を行う為に・・・









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