軍師、改善を行う

「そこは私も計算済み、そして対策も問題なく取れます。謡将の捕縛に関しては然程心配はしていません、失敗する可能性は相当に低いと見ています」
「そこまで準備をしているのですか・・・」
「えぇ。一度の失敗で今までの苦労が一瞬にして水泡に帰する事になりますから、先を見据えておかねばなりませんからね」
しかしそれも折り込みずみと孔明は当然の事とばかりに返す様子に、トリトハイムはまたその慧眼と準備の良さに感服した様子を浮かべる。
「・・・前にも申し上げましたが本当に貴方が大詠師の代わり、いえ大詠師どころか導師となった方がよろしいとすら思えてきました・・・ダアトをより良くするためにはその方が・・・」
「私を評価していただける事は感謝しますが、私はあくまでダアトの是正を行おうとしているに過ぎません。そしてその後のダアトに関しては協力してくださっているという感謝も含め、導師を支える心積もりでいます。ダアトを本来の意味で繁栄させるという意味でです」
「それは・・・」
「それに、導師という存在は導師の血を引く者でなければならないというのが内外共通の認識になります。その導師の血脈が誰一人いなくなったとなれば話はまた別になるでしょうが、私は導師がいなくなるのを望んでいる訳ではありませんし、ましてや大詠師のように導師を傀儡として扱うような真似をしてまで私は権力に固執する気はありません。私はただこのダアトにローレライ教団を変えてまともな形で運営をしたい・・・そう思って行動しているまでです」
「・・・そう、なのですか・・・いえ、却ってそう聞いたことで丞相の事をより信頼したいと思うようになりました・・・丞相の能力ならダアトを掌握して自らの思うままに出来ると思うのに、そこまで滅私奉公出来るというお心をお聞きしたことで・・・!」
「買い被りすぎですよ、トリトハイム殿」
それで孔明に導師になってほしいといった聞く者に場が違えば大問題になりかねないことを口にするが、真摯にそのつもりはないと返していくその様子にむしろ心酔したというように目を輝かせた事に苦笑される。そこまでではないと。
「・・・どちらにせよ、大詠師に関しては全てが終わったなら責任を取っていただかなくてはならないと私は見ていますし、他の詠師達も同様の事を思うでしょう。ですので大詠師に責任を取っていただいたなら、導師は無理だとしてもせめて大詠師の地位に取って変わっていただきたいと私は思っているのですが・・・」
「・・・順当に行けば、次に地位の高い詠師の位置にいるトリトハイム殿達の中の誰かが大詠師になるべきですが・・・」
「いえ、貴方でなければなりません・・・例え我々の中の誰かが大詠師になったとしても、丞相のように考え動くことなど到底無理ですし何よりユリアシティの者達の言葉に流されてしまう可能性もあります。ですが全てを知られた上で覚悟をしておられる丞相でしたら、我々もまた丞相を信頼した上で貴方を支えたいと思うでしょう・・・ですから是非、無事に全て終わりましたら大詠師の地位にお着きください。我々は貴方を全力でサポート致します」
「・・・分かりました。ですがそこから先は私にトリトハイム殿達だけではなく、導師を始めとして他の人々の考えも交えて話し合わねばならないことですから今日の所はここまででお願いします」
「分かりました、その時にお話しましょう」
だがトリトハイムが勢いを止めること無くついには大詠師になってほしいと引く姿勢を見せない様子を見せたことに、孔明は後で話すことと返し頷いた事で終わりとなった。最早モースなど信用出来ないといった会話は。









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