軍師、改善を行う

「・・・一応この帳簿には私や妻、それに兵達のように協力してくれた方々が様子を見て問題を起こす可能性が低いであろう者達を上げてあります・・・絶対に大丈夫だとの保証はありませんが、それでもある程度の指標にはなるでしょう。そこから先で他の人物を登用したいと言った人事に関してはトリトハイム殿達にお任せしますので、問題を起こさないであろう方をお選びください。全て私の指示を待ってからとなりますとあまりにも時間がかかる上、ダアトから出ることすらままならない状態になりますからね」
「・・・そこは我々がいかにしっかり出来るか、と言うことですか・・・分かりました。この帳簿を活かした上でどのように人材登用をするのか、そちらは我々が責任を持って行わせていただきます」
「お願いします」
それで孔明が机から紙の束を取り出しどう活かすかは詠師達にかかると責任を否応無く感じさせる口調で言えば、トリトハイムが臆した様子もなく紙の束を受け取った事に頭を下げる。
「・・・時間も遅いので丞相が明日ダアトを出ることを考えて最後にお聞きしたいのですが、ケセドニアに向かって奥方達と合流したなら丞相はいかがされるつもりなのですか?丞相の予想としてはマルクトの協力を取りつける事が出来た後の事だと思うのですが・・・」
「そちらに関しては妻の方の状況がどう動くのかにかかる部分が大きいので確実とは言えませんが、妻達がケセドニアまで来れたとなればマルクトの協力が取れた事になります。その上でまずは謡将の捕縛に参りたいと思っています」
「っ・・・謡将の捕縛、ですか・・・?」
「はい。選択肢としてはバチカルに向かうことも上がりはしましたが、そうするにはまだ段階が早いのでまずは謡将から捕縛に向かおうというのです」
そしてトリトハイムは今日はもう終わりにしようと最後の問いを向けるが、ヴァンを捕らえると返した孔明に思わず目を丸くした。
「現時点で一番誰が危険なのかと言えばマルクトでもキムラスカでも、ましてや大詠師でもなく、大詠師を隠れ蓑として動いている謡将に他なりません・・・現状としてはまだハッキリと大詠師にも分かるような形で反旗を翻してはいませんが、それが分かる形で表に出るようになった時は取り返しがつかないことが起きた時でしょう。そうなってしまえば大詠師からしても大打撃でしょうが、所属しているダアトからしても同じ事・・・いえ、大詠師がそこにいたとしたなら後始末を任せられるだけの分私達の負担が大きいでしょうね」
「・・・そう、なるでしょうね。大詠師がそのような時に自分が率先して事態の解決をしようとすることなどないでしょう・・・」
孔明はヴァンに行動を起こさせた場合の状況についてをモースがいた場合と意味深に告げると、トリトハイムは最早信用など無いとばかりにモースが行動をしないと言い切る。
「そういった事態にさせないようにするには単純にそうさせない内に止めるのが一番確実です」
「その為に謡将を捕らえる、という訳ですか・・・ですが捕らえるだけで無事に済むのですか?丞相も知られている筈ですが、謡将の強さはダアトの中で並び立つ者もない強さ・・・例え兵の数を増やして挑んだとしても、簡単にいくとは思えないのですが・・・」
だからこそ早めにヴァンを捕らえると言い切る孔明だが、トリトハイムはヴァンの強さについてを不安視する声を向けてくる。伊達や酔狂に家柄だけで謡将という地位に選ばれた訳ではないということをトリトハイムもよく知っている為に。









13/16ページ
スキ